神様はいつも見ている 7
~小説・K氏の心霊体験記~

徳永 誠

 小説・K氏の心霊体験記「神様はいつも見ている」を毎週土曜日配信(予定)でお届けします。
 世界平和統一家庭連合の教会員、K氏の心霊体験を小説化したものです。一部事実に基づいていますが、フィクションとしてお楽しみください。同小説は、主人公K氏の一人称で描かれています。

第1部 霊界が見えるまで
7. 父がフランケンシュタインに

 一週間で結論が出るというならば、それを信じてみよう。

 母は以来、時間があれば、昼も夜も父に付き添って看病した。それは鬼気迫るものだった。
 もちろん、私たち家族もできる限り病院に見舞いに行った。

 意識は無かったものの、父は肉体的には生きていた。

 「信じられない」

 診断に来るたびに医者は困惑していた。

 「生きているのが不思議だ」

 母に乗り移った霊が言うように、父の意識不明の状態は週間続いた。そして最終的に父は一命を取り留めた。

 父の意識は週間後に戻ったのである。

 「母さんの言ったとおりになった」

 私たち兄弟は、顔を見合わせた。

 「もしかしたら、本当に神様がいるのかもしれない」

 これが、家族の中で母が霊能者と呼ばれるようになったきっかけになった事件だった。

 確かに父が生還したことはうれしいことだったが、けがをした体の傷が無くなったわけではなかった。

 皮膚がめくれ、小石が多数入って凸凹になった父の顔は包帯を取ったことで、醜いどころの話ではなく、化け物のように恐ろしかった。

 右目がぎょろりとむき出しに飛び出し、鼻も折れ曲がっている。
 顔の皮膚はまだ砂礫(されき)が取り出されていなかったので、めりこんだ小石が縫い目から見えていた。

 まるで、怪奇映画の主人公のフランケンシュタインのようだった。
 最初に見た時は、あまりのすさまじさに私はぎょっとなって思わず目をそらしてしまった。

 体も完治したわけではなく、左腕はあり得ない角度でねじられたままだった。右足も胴体にねじ込まれ、全身が縮んで見えた。
 到底人間の体とは思えない、壊れたマネキン人形のようだった。

 父の回復を「奇跡だ」と言っていた医者も、その状態には眉をしかめた。

 「このままでは危ない。組織が腐ってしまうから切るしかありませんね。まずレントゲン(エックス線)で写真を撮りましょう」

 医者の言うことはもっともなことだった。

 父のレントゲン撮影の結果が出ると、今後の治療の方向性について医者たちによる話し合いが持たれた。

 その結論は腕の切断というものだった。

 「もう治ることはありません。そのまま放っておくと腐ってきて、命に関わる問題になります。せっかく助かった命なのですから、左腕は付け根から切断しましょう」

 医者は手術に同意する書類にはんこを押すよう促した。

 「切らないと駄目ですか?」

 母は尋ねた。

 「切らなければ、命の保証はできません」

 医者は断言した。

 「切らなくて済む方法は?」

 「ありません」

 医者はレントゲン写真を見せながら左腕の状態を専門用語で説明した。
 負傷した箇所の細胞からばい菌やウイルスなどの病原体が入り、そこから細胞の壊死が起こったり、破傷風などに感染したりする可能性があると告げた。そして左腕だけでなく、それが全体に及ぶ危険性があることを医者は縷々(るる)説明した。

(続く)

---

 次回は、「医者か、神か」をお届けします。