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世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~

G7広島会議、「主役」はゼレンスキー

渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)

 今回は、515日から21日までを振り返ります。

 この間、以下のような出来事がありました。

 ウクライナ軍、バフムート周辺20平方キロ奪還と主張(16日)。金正恩(キム・ジョンウン)氏、軍事衛星施設を視察(17日)。英トラス前首相、「中国の脅威増している」西側諸国に団結訴え台湾で講演(17日)。G7広島サミットの開幕(19日~21日)。ゼレンスキー大統領、アラブ連盟の首脳会議で演説(19日)。日韓首脳が韓国人原爆慰霊碑参拝へ(21日)。中国が日本大使呼び抗議、G7巡り(21日)、などです。

 ゼレンスキー大統領が521日、「電撃的」にG7広島サミットに対面で参加しました。
 当初は、オンライン形式での参加といわれていたのですが、政府関係者によれば開幕する約1週間前に、ゼレンスキー氏の意向が伝えられたといいます。
 米国の協力も得て日本政府は日程調整に着手し、実現しました。

 ゼレンスキー氏は、ロシアへの大規模な反転攻勢の準備に入っています。
 13日から15日に伊独仏英を歴訪、さらに19日はサウジアラビアを訪問、アラブ連盟の首脳会議にも参加し理解、協力を要請したのです。

 今回はG7サミットに参加し、F16戦闘機を含む軍事支援、対露制裁の強化を働きかけ、核使用の威嚇が続く中で被爆地広島から、核兵器使用は許されないとのメッセージを発信する狙いもありました。

 520日、G7サミットの共同声明が発出されました。その内容は、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を守り抜く決意を強調し、ロシアを支援する国々への代償を増大させるとの警告が含まれていました。
 主な要点は、以下のとおりです。

 ①ロシアの「違法な侵略戦争」に直面するウクライナを「必要とされる限り支援する」、②即時撤退に向け、ロシアに圧力をかける、③中国に対して、東・南シナ海情勢への深刻な懸念を表明、④中国に対して、台湾海峡の平和と安定の重要性を確認、⑤「核兵器のない世界」に向けて核軍縮・核不拡散の重要性を再確認、⑥人工知能について、「生成AI」の国際ルール作りに向けて「広島AIプロセス」をまとめることを確認、などです。

 G7広島サミットでウクライナは、今年と来年以降、ロシアよりも優れた兵器を受け取ることを確実にしたといえます。勝利への展望が開かれたといえるでしょう。これをもって、時間はロシアではなく、ウクライナの側に味方します。時間と共にウクライナの軍事的優位性が大きくなるでしょう。

 G7は今後も、国連が主導する「法に基づく国際秩序」を支持するよう国際社会を説得する方法を考えなければなりません。しかし一番確実なのは、ウクライナ戦争を早く終結させること。そしてこの戦争をウクライナの主権を維持する結果で終わらせることなのです。

 大規模な反転攻勢は多くの犠牲を伴うことでしょう。しかし始まった戦争を停戦、和平合意へと導くことは簡単ではありません。
 7月以降と見られる大規模反転攻勢=「機動戦」を契機に、停戦合意へといかに押し込むか、その知恵が必要なのです。
 いずれにしても「戦争を始めてはいけない」のです。



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