2023.04.07 22:00
【テキスト版】
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第132回 共産主義の資本論の誤りを教えてください
ナビゲーター:阿部美樹
皆さん、こんにちは!
今回は、「共産主義の資本論の誤りを教えてください」という質問に対してお答えいたします。
マルクスは資本主義の打倒のために、経済学の研究にその半生を費やし、『資本論』を刊行しました。それは資本主義の罪悪性を明示し、「必ず倒さなければならない」と訴えるためです。
そこに述べられている「マルクス経済学」は、現在に至るまで多くの知識人に影響を与えました。
『資本論』は労働価値説と剰余価値説という二つの理論から成り立っています。
まず、労働価値説の要点をお伝えします。
マルクスは、商品の持つ価値には「使用価値」だけでなく、「交換価値」があると言いました。
使用価値とは、商品によって人間の精神的・肉体的欲求がどれほど満たされたかを示す価値のことをいいます。
それに対して交換価値とは、他の商品と交換する際に量的比率で表される価値のことをいいます。これを貨幣で表現すれば「価格」となります。
マルクスは使用価値を概念から切り捨て、労働者の労働時間があらゆる商品の共通要素で、これによって価値が決まると考えました。その観点から見ると、商品の価値に対して、資本家は何の役割も果たしていないというのです。
資本主義社会は、労働者が生産した商品を資本家が独占し、奪い取ることで成り立つ社会である、とマルクスは批判します。
しかし、実際には商品の価格は絶えず変動します。また、単純労働と、知識や熟練を要する複雑労働は、同じではありません。
それに対してマルクスは「商品価値=単純労働時間×知識・熟練度」と弁明しますが、知識・熟練度の数値は誰が決めるのかは不明です。
また、骨董(こっとう)品やアイデアや情報など、労働時間が生じない商品はどのように価値を判断するのかなど、疑問点はたくさんあります。
ですから、商品の価値は労働量ではなく、使用価値によって決定されるものです。
生産者と消費者の満足量が一致したときに交換が成立するのであり、満足という喜びの量が商品の価値だといえるのです。
次に剰余価値説の要点をお伝えします。
必要な賃金を得るためには1日5時間働けばよい労働者がいたとします。しかし、彼は8時間働いているとしたら、3時間の労働は本来必要のないものです。
これを「剰余労働」と呼びます。
資本家は労働者には必要労働に当たる賃金しか払いません。その剰余価値を資本家は利潤として搾取していると考えます。
機械の導入で生産効率が上がって短い時間に成果を出したとしても、残りの時間は剰余労働として資本家が利益を独占していることになります。
ですから、機械の導入は労働者により多く働かせて搾取の助長をしていることだと解釈するのです。
しかし、実際の利潤は現場で作業する労働者の労働だけでなく、多くの生産要素によって生まれます。
現場の労働者以外に、経営者、事務員、そして原材料や設備など、あらゆる生産要素が円滑に授受作用してこそ、大きな価値が生み出されるのです。
現実には、労働者の賃金が不当に低く抑えられることがあります。しかしそれは、資本主義そのものがもつ欠陥ではありません。
道徳心や順法精神に欠けた経営者がいるためであって、それは人間の精神性の欠如による問題です。
マルクスが主張するような「労働者は全て善であり、資本家は全て悪である」という極端な考え方で、「労働者の天国」を実現できるはずがありません。