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43とも倶楽部誕生物語 26
学力日本一の児童たちをつくった村

櫻井 晴信

 今話題のユニークな読書会、「43とも倶楽部」。本シリーズでは、「43とも倶楽部」がどのようにしてつくられてきたのか、その誕生の物語をお届けします。

 明治時代に始まった学歴社会は、試験で点を取るための詰め込み学習を教育の柱にしてしまいました。

 しかし、学校は「知識を覚えるところ」という考え方に一石を投じ、学力日本一の児童たちをつくった村があります。それが秋田県東成瀬村という秋田県で2番目に小さい村です

 人口2,500人、コンビニは一軒だけで、スーパーや塾もありません。
 小学校と中学校は一校ずつ、一学年の児童数は20人前後です。毎年教師は3分の1ずつ替わります。教師が替わると教え方が変わるのが普通ですが、ここでは義務教育の9年間は教育方法が一貫しています。

 その一つは自学ノートです。学校から出る宿題の他に、自分でやりたい勉強を自分で決めて、一日2ページ、ノートに書いて、翌日先生に提出します。ノートは2冊あって、交互に書きます。それは、先生が一人一人のノートを見て、赤ペンで添削して翌日返すため、2冊必要なのです。

 選ぶ理由は好きな教科だったり、苦手な教科を克服するためだったり、さまざまです。教科は違っても学習方法は決まっています。①日付 ②時間 ③取り組む内容 ④目当て ⑤振り返り、です。

 何時何分に始めて何時何分に終わったかを見ることによって、生活リズムが分かり、習熟度も分かります。

 目当てはこの学習を通して、「どういう効果を得たいのか」を決めます。
 振り返りは、その目当てをどれくらい達成できたのか、やってみて気付いたこと、これから取り組むべき課題は何か、を書きます。

 これは、やらされる勉強ではなく、自ら主体的に取り組む勉強です。「会読」に似ています。

 そして、先生は赤ペンでハナマルを付けたりコメントを書くのですが、決して批判したり、注意をしたりしません。良いところを見つけて褒める、もし注意すべき点があったとしてもアドバイスにとどめます。

 この自学ノートの狙いは家庭学習の習慣化です。子供たちには夜9時に寝るように指導します。「早寝早起き朝ごはん」これが東成瀬村の教育方針です。

 家に帰ったら、まず宿題と自学ノートに取り組む、この習慣が小学校の6年間で身に付けば、学力が日本一になるというのもうなずけます。(続く)