2018.07.17 12:00
世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~
中国への牽制、日本とフランスが協力強化
渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)
7月9日~15日を振り返ります。
この間、以下のような出来事がありました。
トランプ大統領、連邦最高裁判事に保守派のブレット・カバノー連邦高裁判事を指名すると発表(7月9日)。経済産業省が「通商白書」を公表。「保護主義」を懸念(10日)。
トランプ政権、中国から輸入する2000億ドル相当の製品に10%の追加関税を課すことを発表(10日)。NATO首脳会議。トランプ大統領、加盟国に防衛費増を要求(11日)。
フランス政府、インド太平洋の安全保障で日仏協力を強化することで合意(12~14日)。
トランプ政権のロシア疑惑を捜査するモラー特別検察官、ロシア情報部員12人を起訴(13日)。米朝、米兵の遺骨捜索再開で合意(15日)、などがありました。
今回は、フランスが中国による海洋覇権を阻止するために日本との協力関係強化の方針を明確にしたことを取り上げます。
7月12~14日、河野太郎外相はフランスを訪問しました。そこでインド太平洋の安全保障協力で日仏協力を強化することで合意しました。日本は米国、インド、オーストラリアとともに、「自由で開かれたインド太平洋戦略」を進めていますが、フランスも連携することになりました。中国に対する牽制が一層強化されることになります。
7月13日、自衛隊と仏軍が物資・役務を融通し合う物品役務相互提供協定(ACSA)に署名し、14日、日仏外相会談で、エネルギーや環境問題を含めた「海洋対話」の枠組み設置に合意しました。双方は互いに「特別のパートナー」と位置付けています。
フランスはインド太平洋に海外領土を保有しています。ニューカレドニア(西太平洋)、仏領ポリネシア(同)、ワリス・フュチュナ(同)、レユニオン(インド洋)などです。この地域に約8000人の兵力を展開しています。
マクロン仏政権は、顕著になった中国の強引な権益拡大に対し、「既成事実化の押し付けは断じて認めない」(パルリ仏国防相)との方針を明確にしています。オランド前政権は、経済・貿易重視策をとり、「中国より」外交だったのですが、その方針を転換し、南シナ海で「航行の自由」を確保するため、昨年だけで少なくとも5隻の艦船を派遣しました。
今年6月に策定した戦略指針「インド太平洋の安全保障」は、中国による南シナ海での人工島造成や軍事拠点化の動きが緊張を招いているとした上で、「世界貿易の行路が集中する地域であり、危機は域外に広がる可能性がある」と明記し、多国間主義、国際法による支配の重要性を明確に外交の柱に掲げました。
マクロン大統領の年内訪日に向けて、調整が進んでおり、海洋安保協力が最大のテーマになりそうです。