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青少年事情と教育を考える 221
思春期以降の愛着関係の重要性

ナビゲーター:中田 孝誠

 「愛着」については、これまで本欄でも何度か取り上げてきました。
 今回は、思春期の愛着に関する本を紹介します。
 『思春期の子どもと親の関係性』(小野善郎著 福村出版)です。著者の小野氏は精神科医、子供の心の専門医です。

▲『思春期の子どもと親の関係性』

 愛着は、乳幼児期に特定の他者(多くの場合は母親といわれます)との間に持つ情緒的な絆のことです。そうした情緒的な関係が子供の心理的・社会的な成長に大きな影響を与えます。子供は親との愛着による安心感と安全を確保して社会に向かうようになります。

 この本で著者が強調しているのは、思春期以降の愛着関係の重要性です。
 愛着は乳幼児期をイメージしやすく、思春期になると親との接触が減って意識しにくくなります。しかし、思春期は親とのつながりが身体的なものから心理的なものへ質が変化するというのです。

 そして、親への愛着から思春期の仲間へのつながり、最終的に夫婦関係を中心とした成人の愛着に到達するといいます。愛着の関係はそれほど大切なものだというわけです。

 また著者は、子育てには父母だけでなく祖父母や親類、地域の手助けが大切だと述べています。いわゆる「共同養育」といわれる考え方です。
 著者はそうしたコミュニティーを「愛着の村」と名付け、家庭や地域、学校でも愛着の土台をつくることが大切だと訴えています。

 愛着を通じた子育てはもちろん、地域全体が愛着で結ばれたコミュニティーづくりは、とても興味深いものです。