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【B-Life『世界家庭』コーナー】
砂漠と炎熱のイスラムの国から
北アフリカ・スーダン日誌⑤
親戚づきあいが人生の8割
時に一人になりたいと思うことも……

 2015年から2016年まで『トゥデイズ・ワールド ジャパン』と『世界家庭』に掲載された懐かしのエッセー「砂漠と炎熱のイスラムの国から 北アフリカ・スーダン日誌」を、特別にBlessed Lifeでお届けします!

 筆者の山田三穂さんは、6000双のスーダン・日本家庭です。

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 スーダンは大家族主義です。自分の家族だけでなく、親戚とのつきあいをとても大切にします。特に女性は、人生の8割ぐらいを親戚づきあいに費やしていると言えるでしょう。

 イスラム教の国であるスーダンでは、4人まで妻を持つことができます。そのため、夫のいとこだけでも100人を超えています。夫から親戚を紹介してもらったことがありますが、あまりにも多いので、つい夫に「全員の顔と名前を覚えているの?」と尋ねたら、「当たり前だろ!」と叱られました。

▲スーダン人の夫婦。女性の衣装はトーブといい、肌をすっぽりとおおうように作られている。また、女性は夫以外の男性には笑顔を見せてはいけないという戒律もある

 あるとき、いとこの奥さんの妹という人が遊びにきたのですが、名前が分からないのです。彼女が「なぜ私を覚えていないの?」と怒るのですが、私は「マレーシ(すみませんね)」と答えながらも、内心では「覚えるのは絶対無理だ~」と思っているのです。

 日本をはじめ、先進国では少子化問題が深刻な中、ここでは合計特殊出生率が5.1人で、多い人は15、6人を生みます。

 出産は特に、一大行事と言ってもいいくらいで、妊婦が出産のために病院に行ったと聞けば、女性の親戚20人ぐらいが4段重ねのお弁当を準備して病院に駆けつけます。

 赤ちゃんが誕生するまで、妊婦のそばにいて寝泊まりするのですが、そのとき、持参したお弁当を食べながら待つのです。てっきり、妊婦のためのお弁当だと思っていたら、見舞い客たちの食事と知ってあぜんとしました。

 出生率の高さに加え、親戚も多いので、毎月、出産に立ち会っているように感じます。

 以前、自宅の近所にスーダン人の男性とルーマニア人の女性の夫婦が暮らしていました。ご主人の妹が出産後、お祝いに来てくれた親戚の接待に疲れ、母乳が出なくなったそうです。

 それを聞いたルーマニア人の奥さんが「出産後の親族の訪問を止めるべきだ」とご主人に言ったのです。すると、ご主人は「そんなことをしたら大変だ。村八分だぞ」と答えたと言います。

 親戚は出産に限らず、病気やけがで病院に入院したとき、退院したときも駆けつけます。結婚式となると400人くらいが集まるのです。また、旅行に出掛けると言えば見送りに行き、帰って来たと言えば迎えに行きます。

 10年前、私が日本から帰国したとき、マイクロバスを貸し切って30人くらいの親戚が空港に迎えに来ていたので、面食らいました。ありがたいけれど、それにしても限度というものがあるんじゃないか、というのが本音でした。迎えてもらえば、お礼にお土産をあげなければなりません。ですから、手ぶらでは帰れませんね。

 住居は、一般的に親が残した土地を兄弟、いとこで分け合い、隣同士に家を建てて暮らします。私たちも、主人の母が残してくれた土地を兄弟で4つに分け、わが家と2人の姉の家族、妹の息子家族が隣接して暮らしています。

 一緒に食事をすることが多く、全員が集まると30人くらいになります。親戚というより家族なので、自分の家には誰かしらが常に出入りしています。

 また、外より家の中が暑い夜は、庭にベッドを持っていって親族たちと一緒に寝ます。庭で、おしゃべりをしながら、満天の星とそよ風に包まれているうちに、気持ち良く眠れるのです。

 私は若いとき、対人恐怖症で人づきあいが大の苦手でした。それが、ここで10年くらい暮らすうちに、苦手意識はすっかりなくなりました。それでも、時には一人になりたいと思うし、趣味を持ちたいと思うことがあります。

 ちなみに、夫の妻は、もちろん私一人です。

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(この記事は、『世界家庭2016年1月号に掲載されたものです)