2023.02.21 12:00
平和の大道 21
対馬に来れば北東アジアが見える
皆さんは、『平和の大道』という書籍をご存じでしょうか。著者は、一般財団法人国際ハイウェイ財団の理事長、佐藤博文氏です。
同書は、国際ハイウェイ財団が推進する「国際ハイウェイ・日韓トンネル」プロジェクトの意義や背景などについて総合的に理解することのできる貴重な一冊です。
Blessed Lifeではその一部を抜粋して紹介してまいります。ぜひお楽しみに!
佐藤 博文・著
先回の記事では、対馬から1500km以内一帯を空間的・地政学的に眺めてみた。今回は時間的にタイムスリップして歴史を遡り、2000年ほど前から現代にいたる対馬の歴史を、交流(政治、文化)史を中心として見ることにする。
対馬は日本列島の西の端に位置する孤島であるが、ここに来ると意識が空間的にも、時間的にも大きく広がり北東アジア全域に広がる。対馬は世界平和、東アジアの平和について実感をもって考えることができる絶好のスポットである。今回から数回にわたって対馬を舞台に展開してきた北東アジアの歴史、日韓交流史等について記述することにする。
古代東アジアの国際政治の舞台
去年(2012年)4月7日、「邪馬台国と対馬」のテーマで西谷正(九州大学名誉教授)九州歴史資料館館長の講演会があった。
以下は主としてその時の西谷先生の講演からの抜粋である。
今から1700、1800年ほど前、中国大陸では魏・呉・蜀の争う「三国志」の世界であった。3世紀前半の中国は、北部は魏、西南は蜀、東南には呉という三つの国に分裂していた。その魏の歴史書「魏書」の中の「魏志倭人伝」に遥か東の海の小さな島のことが記述されている。
日本列島は「倭」と呼ばれ、「魏志倭人伝」に対馬のことが登場する。日本列島のことが中国の正史、国家編纂の歴史書に記録されているということはただ事ではない。これは当時の国際情勢、東アジアの政治構図を反映した結果である。
当時の日本は大和政権ができる前のいわゆる「邪馬台国」の時代であった。「魏志倭人伝」の中に対馬についての記述がある。
「始めて一海を渡る。千余里。対馬国に至る。その大官を卑狗(ひく)と曰ひ、副を卑奴母離(ひなもり)と曰ふ。…」
この卑狗、卑奴母離は邪馬台国から派遣された行政官ではなかったかと見ている。そういう地域を治める仕組みが既にあったのである。
韓半島には魏王朝の外交拠点である「帯方郡」があり、倭国には倭人の国の頂点に「邪馬台国」があり、日本列島を分けて、外交の往来にとって大事なところであったという形でこの「対馬国」が登場する。
魏から外交使節を送る場合、対馬が日本に来る中継地点であった。使節は朝鮮半島を通って、対馬に到着し、そこから壱岐島に渡り、北部九州に来て、邪馬台国に向かったと記述されている。
魏は北方民族対策として、いわゆる「近攻遠交」の戦略を取っていた。北方民族が朝鮮半島や日本列島と手を結んだら、魏にとって大変な東の脅威になる。現代の満州から朝鮮半島、日本列島を味方につけることによって外交的に対抗しようとした国際戦略があった。
日本が敵国につかないように、日本に外交使節を送った。「対馬」を中継点として九州、邪馬台国に向かった。また、魏の都・洛陽に日本からの使節を送り、天子に会わせている。それほど大事にしたというのは味方につけたということだ。
当時既に、想像もつかないような東アジアを舞台にした国際外交が展開していた。対馬が東アジアの国際政治の舞台となっていたという。対馬は当時から既に国際政治の舞台であった。
中国大陸、韓半島、日本列島を舞台に国際政治が展開されていた当時も、近現代史と同じような政治情勢であったことが分かる。日韓中のせめぎ合いの中で東アジアの歴史が展開するという構図は、古代から基本的には変わっていないということだ。
アジアに発信する歴史海道都市
現在はどうかというと、対馬市は「アジアに発信する歴史海道都市・対馬市」のスローガンを掲げて地域開発・観光誘致に務めている。これは的を射た標語である。
対馬は「日韓交流の架け橋」と言われる。世の中が緊張状態、戦争状態になると国境警備の最前線としての役割も果たすが、そういう時代はたまにしかなかった。それ以外の多くの時代は、日韓、アジアを結ぶ島としての役割を果たしてきた。
対馬に日韓トンネルが開通すれば、「日韓交流の架け橋」としての対馬が文字通り「アジアに発信する歴史海道都市」として、アジアの文化交流、流通の一大拠点となるに違いない。
次回は、日韓の交流史について述べることにする。
(『友情新聞』2013年3月1日号より)
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次回は、「対馬は東アジア歴史の『タイムカプセル』」をお届けします。
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