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愛の知恵袋 171
自立力・結婚力・家庭力を養おう

(APTF『真の家庭』292号[20232月]より)

松本 雄司(家庭問題トータルカウンセラー)

結婚しない若者、すぐ離婚してしまう夫婦

 10組ほどの熟年夫婦と懇談会をもった時のことでした。老後の経済や健康上の不安などいろいろな話が出ましたが、彼らの一番の悩みは“子供の結婚”でした。

 「息子が40歳になるのに未だに結婚していない」、「娘が35歳になるのに結婚できていない」といった悩みが出てきました。

 さらに、「うちの娘は結婚はしましたが、3年もたたないのに別れたいと言い出すんです。夫が頼りないというんです」、「息子夫婦が家庭内別居の状態で、このままでは離婚になりそうで心配です。嫁は家事が苦手なうえ、言葉づかいがきついらしいんです」という話も出てきました。

 いずれも、身につまされるような話でしたが、これは決して特殊な事例ではなく、現在の日本社会が抱えている共通の課題ではないかと思います。

戦後の個人主義教育の負の側面

 戦後の学校教育を受けてきた世代が結婚して親となり、今はさらにその子供たちがジェンダーフリーの教育をうけて成長し、結婚・育児の時期を迎えています。

 この新世代は個人の自由と権利には敏感だが責任と義務には疎いと言われ、「自分らしく生きればいい」と考えるので、組織内で協調性がなかったり、結婚して家庭に束縛されるのさえ嫌がる人もいます。さらに、「家庭を築く」「子孫を残す」といった価値観が乏しいので結婚願望が薄く、仕事や趣味に没頭しているうちに婚期をのがしてしまいがちです。

 また、結婚しても夫婦関係で躓きやすい傾向があることにも理由があります。

 彼らは男女ともに大半が大学や専門学校という高等教育を受けていて、知識は豊富で弁も立ちます。そして好き嫌いが多く自己主張が強いという傾向があります。

 さらに、ジェンダーフリー思想で、「男らしさとか女らしさとかは必要ない、人間らしくあればよい」という教育を受けるので、今や「男らしさの希薄な男」と「女らしさを喪失した女」が陸続と育成されているわけです。

 その結果、男も女も一個人として生きているうちは特に問題は生じませんが、結婚して異性と共同生活を営む段階になると、なぜかうまくいかず、互いに不満が高じて衝突し、破綻してしまうというケースが多くみられます。

正しい意味での男らしさ・女らしさの必要性

 数年前、PTA協議会の依頼で講演をさせて頂きました。地域内の11の小中学校のPTA役員と校長と一部教職員が参加する役員研修会での講演でした。

 そこで、「子供たちの現状」「小学生期の家庭教育」「思春期の子供の心理と親の役割」「男の子、女の子の育て方」などについてお話ししました。

 講演後、校長の一人から質問がありました。「今、先生のお話の中で、男らしさ・女らしさも大切であるとのことでしたが、今の教育現場ではそれを言ってはいけないという雰囲気があるのですが、この点についてはどうお考えでしょうか?」

 「さっそく来たな」と思いましたが、こう答えました。

 「まず、大前提として、私は“男性と女性の人間としての価値は絶対に同等である”と考えています。それを踏まえた上での話ですが、現在の学校教育では教育の目標を“自立できる人間にすること”に置いています。しかし、仕事をもって自立するだけで人生は終わりではありません。そのあと結婚し、家庭を形成しなければなりません。知識があり仕事ができても、結婚した時に良き夫・良き妻になれなければ夫婦は破綻します。

 私はカウンセラーとして家庭崩壊の悲劇をあまりにも多く見てきたので、子供の教育の最終目標を“自立できる人間”だけではなく、“良き家庭を築ける人間”にも置く必要があると考えています。実は、夫婦の愛が深まるための必須の要素は“男らしさ”“女らしさ”なのです。ですから、戦前のような男尊女卑的な思想は好ましくありませんが、“正しい意味での男らしさ・女らしさ”は人生全体を成功させるために必要であると感じています。今の学校教育は知育・体育・技術教育が中心ですから、この“男らしさ・女らしさ”を含む結婚力と家庭力については、主に家庭教育においてしっかりと育成すべきかと思います」

 私はその校長から反論が来るかと思っていたのですが逆でした。「やっぱりそうですか! それでいいんですね。納得しました」とうなずきながら答えてくれました。

家庭教育で「結婚力」と「家庭力」を養おう

 私たちの大切な子供たちに本当に幸せになってほしいと願うならば、「自立力」と「結婚力」と「家庭力」をしっかりと身につけさせてあげる必要があります。

 社会人としての「自立」に必要な知力・体力・技術力・人間関係力は主に学校と交友関係で身につける事ができますが、「結婚力」と「家庭力」については“両親の後姿で学ぶ”という側面が大きいと思います。

 親が夫婦で仲良くし、子供たちとよく交わり、「家族っていいなあ!」と実感させてあげることが何よりも大切です。また、息子や娘は父親や母親の“手伝いを楽しくする”ことで、自然に将来役に立つ「家庭力」を身につける事ができます。

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