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世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~

米、中国「気球」をF22で撃墜

渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)

 今回は、130日から25日までを振り返ります。

 この間、以下のような出来事がありました。

 ウクライナにF16戦闘機は供与せず、バイデン米大統領明言(130日)。台湾侵攻準備を習氏指示と、米CIA(中央情報局)長官が発言(22日)。中国の「気球」が米上空を飛来、国防総省が公表(22日)。「気球」巡って米国務長官の訪中延期を発表(23日)。米国が中国の「気球」を撃墜(4日)、などです。

 一つの「気球」が米中間に新たな緊張を引き起こしています。
 オースティン米国防長官は24日、東海岸沖のサウスカロライナ州沖の領海上空で、中国の偵察用気球を撃墜したと発表しました。

▲気球(イメージ)

 午後239分、高度約180002万メートルを飛行中の気球に「F22ラプター」が空対空ミサイル「サイドワインダー」1発を発射して海に落下させたというのです。「気球」の撃墜にF22戦闘機まで登場したのです。

 オースティン氏は同日、声明で、この気球について「米本土の戦略的拠点を監視する目的で中国が使用していた」と断言しています。

 一方、中国外務省は5日の声明で、撃墜について「明らかに過度な対応だ」と非難し、「強い不満と抗議」を表明しました。
 中国の政府関係者によれば、米側は外交ルートを通じて撃墜することを事前に伝えてきたといいます。
 さらに「中国は関連企業の正当な権益を断固守り、同時に必要な措置をさらに講じる権利がある」と述べ、対抗措置までちらつかせています。

 もう一つ重大なことが起きていました。3日、バイデン政権はこの気球の故に、予定されていたアントニー・ブリンケン国務長官の訪中を無期限で中止したのです。出発の数時間前の決定でした。

 気球について中国外務省の発表は、主に気象研究を目的とする民間の気球であり、不可抗力で予定航路から外れたと釈明しましたが、米国は、目的は偵察だと確信しているとし、中国側の発表は「うそ」だと明言したのです。

 国防総省高官らの説明によれば、この気球は128日に米アラスカ州アリューシャン列島周辺に米国が設定している防空識別圏に入った後、アラスカ州北部の上空に侵入。30日にカナダ上空に移動し31日に米アイダホ州北部から再び米領空に入り、米本土を横断したといいます。
 22日、米国防総省は気球がモンタナ州上空を飛行していると初めて公表しました。そして3日、4日の「事態」につながったのです。

 注目されたのは、気球が上空を通過したモンタナ州には、核弾頭が搭載可能な大陸間弾道ミサイル(ICBM)「ミニットマン3」が保管されているマルムストローム空軍基地があることです。

 さらに、中国の偵察気球は技術向上により、GPS(全地球測位システム)を使っての操縦が可能。しかも、さらに改良すれば爆弾を搭載することもできると見られているのです。

 わざわざ高価な長距離ミサイルを使わなくとも重要軍事拠点や都市攻撃によって撹乱(かくらん)できることとなり、これは「兵器」と認定するのが妥当との判断がなされたのです。
 中国はさらに追い込まれることとなりました。



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