2022.12.28 22:00
【テキスト版】
ほぼ5分でわかる介護・福祉Q&A
第35回 障がい者福祉編⑰
最近の夫の様子を見て、うつ病ではないかと心配です
ナビゲーター:宮本 知洋(家庭連合福祉部長)
医学用語・法律用語としては「障害」とし、一般的な用語としては「障がい」と表記しています。
今回は、「最近、夫はふさぎ込んでいて、食欲がなく、夜も眠れないようです。何をしても喜びがないと言っていて、うつ病ではないかと心配しています」という質問にお答えします。
うつ病を含む気分障害の国内の患者数は100万人を超えていて、ここ20年の間に急増しています。しかも最近は、コロナ禍による生活形態の変化や経済問題が原因となってメンタルヘルスが悪化し、いわゆる「コロナうつ」にかかってしまう人も多くなっています。
うつ病の生涯有病率(ある人が一生のうちにその病気にかかる確率)は約6%(厚生労働省「みんなのメンタルヘルス」総合サイトより)といわれており、誰でもかかる可能性があるので、「心の風邪」などといわれることもあります。
そのように表現すると軽い病気のようなイメージを持たれがちですが、ご本人の苦しみは相当なものですし、重くなると自殺企図の可能性もあるので注意しなければなりません。
では、うつ病の症状にはどのようなものがあるのでしょうか。
・ほとんど一日中憂うつで、沈んだ気持ちになる。
・ほとんどのことに興味を失い、それまで楽しくやれていたことが楽しめなくなる。
・食欲が低下するか、逆に増加する。
・寝つきが悪い、夜中に目が覚める、朝早く目が覚めるなどの不眠状態になるか、逆に眠り過ぎてしまう。
・話し方や動作が鈍くなる、あるいはイライラして落ち着きがなくなる。
・疲れやすく感じ、気力が低下する。
・自分には価値がないと感じ、自分のことを責めてしまう。
・何かに集中したり、決断を下したりすることが難しい。
・「この世から消えてしまいたい」「死にたい」などと考える。
このような症状が多く見られるようになると、うつ病の可能性があります。
うつ病の原因ははっきりとは解明されていませんが、危険因子、すなわちうつ病になるリスクが高くなる要因は分かっています。
うつ病の危険因子として厚生労働省は、性別、年齢、つらい被養育体験、最近のライフイベント(ストレスとなった出来事)、心の傷(トラウマ)になるような出来事などを挙げています(厚生労働省「うつ対策推進方策マニュアル」より)。
性別で言えば、世界的な傾向として女性の方が男性より発症率が高くなっています。その理由としては、思春期の女性ホルモンの増加、妊娠・出産などの女性に特有の危険因子、男女の社会的役割の格差などが挙げられています。
年齢については、一般的には青年層に多い疾患といわれていますが、日本の場合は中高年層でも多くなっています。
また性格的に見ると、几帳面、完全主義的、責任感が強く手抜きができない、などの人はうつ病になりやすいといわれています。
うつ病の主な治療法としては、薬物療法、休養、心理療法が挙げられます。
特に休養が重要で、仕事をしないのはもちろんのこと、趣味や対人関係も制限する必要があります。仕事が気になったり、退屈に感じたりする人もいるかもしれませんが、休養は治療であると考えて徹底することが必要です。医師とよく相談しながら生活環境を整えていきましょう。
ご家族がうつ病だと診断された場合は、安心できる環境でゆっくり休ませてあげるようにします。ご本人に接する際、穏やかな態度で、じっくり話を聞いてあげてください。うつ病になったことを否定的に捉えず、人生の休養期間を与えられたのだと肯定的に考えるとよいでしょう。「頑張って」と励ましたり、原因を追求したり、決定をさせたりすることは避けた方がよいと思います。
自殺の恐れがある場合は、その人に寄り添い、関わることによって、孤独になったり、孤立したりしないよう支援することが重要です。
自殺の危険を示すサインに気付き、声をかけ、話を聞き、必要な支援につなげ、見守るという適切な対応を図ることができる人を「ゲートキーパー」と呼びます。一人でも多くの人がゲートキーパーとしての意識を持って行動することが自殺対策につながります。ゲートキーパーについては、厚生労働省や自治体で研修機会や支援のネットワークを設けています。
うつ病は、おおむね元の状態に回復(寛解)することが可能ですが、一方で再発することも多いのが特徴です。再発を防ぐためには、回復後もストレスをためない生き方をしていくことが大切です。
うつ病は、早期対応がとても重要です。もしかしたらうつ病かもしれないと思われるのであれば、医療機関を受診してみられることをお勧めします。
それでは、今回の講座はこれで終わりにさせていただきます。