2022.11.28 12:00
愛の勝利者ヤコブ 10
アプリで読む光言社書籍シリーズとして「愛の勝利者ヤコブ」を毎週月曜日配信(予定)でお届けします。
どの聖書物語作者も解明し得なかったヤコブの生涯が、著者の豊かな聖書知識と想像力で、現代にも通じる人生の勝利パターンとしてリアルに再現されました。(一部、編集部が加筆・修正)
野村 健二・著
天地の祝福と献祭④
さて、アブラム(のちのアブラハム)の献祭が神のみ意(こころ)に果たしてかなうものであったかどうかは、その次の節を読めば、賢明な読者はすぐにお分かりになろう。
日の入るころ、アブラムが深い眠りにおそわれた時、大きな恐ろしい暗やみが彼に臨んだ。時に主はアブラムに言われた、「あなたはよく心にとめておきなさい。あなたの子孫は他の国に旅びととなって、その人々に仕え、その人々は彼らを四百年の間、悩ますでしょう。しかし、わたしは彼らが仕えたその国民をさばきます。その後かれらは多くの財産を携えて出て来るでしょう。あなたは安らかに先祖のもとに行きます。そして高齢に達して葬られるでしょう」(創15・12〜16)
ここで特に「大きな恐ろしい暗やみが彼に臨んだ」というところに注目せられよ。これがのちに、100歳にして初めて、正妻サライ(その時には神の命により名を「サラ」に改めていた)の胎に授けられた実子イサクを献祭としてささげよという、信じがたい神の厳しい命令が発せられざるをえない状況へとつながっていくのである。
とはいえ、愛なる神はアブラムの心の準備が十分整えられるまで、そうした深刻な試みに直面させようとはなさらなかった。目下のところは希望だけをアブラムに与えて、神が計画された摂理に向かって彼が雄々しく進めるようにと、ただそれだけを配慮されるのである。
やがて日は入り、暗やみになった時、煙の立つかまど、炎の出るたいまつが、裂いたものの間を通り過ぎた。その日、主はアブラムと契約を結んで言われた、「わたしはこの地をあなたの子孫に与える。エジプトの川から、かの大川ユフラテまで。すなわちケニびと、ケニジびと、カドモニびと、ヘテびと、ペリジびと、レパイムびと、アモリびと、カナンびと、ギルガシびと、エブスびとの地を与える」(創15・17〜21)
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次回は、「イサク献祭①」をお届けします。