2018.06.19 12:00
世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~
第12回 米朝会談、動き出す「トランプ方式」
渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)
6月11日から6月17日を振り返ります。
主な出来事は以下のとおりです。
米朝首脳会談で両首脳が共同声明に署名(6月12日)。韓国統一地方選挙与党圧勝(13日)。日本政府、日朝首脳会談実現を目指し本格的に動き出す(14日)。米政権が、知的財産権侵害を理由に中国への制裁関税を段階的に発動すると表明(15日)。中国国務院(政府)関税税則委員会は、米国産品に追加関税を課すと発表(16日)、などが挙げられます。
今回はこの中から、米朝首脳会談を取り上げます。
日本の主要メディアは18日、世論調査の結果を公表しています。読売新聞(15~17日調査実施)によれば、米朝首脳会談について「評価する」が43%、「評価しない」が47%となり、「核・ミサイル問題の解決に向かうと思う」が24%、「思わない」が64%となりました。総じて会談内容の評価は厳しいものになっています。
その理由は、非核化に関しての具体性がなかったことが挙げられます。まさに「非常に包括的なもの」(トランプ大統領)でした。
ポイントは以下のごとくです。
・トランプ大統領は北朝鮮に安全の保証を与え、金正恩委員長は朝鮮半島の完全な非核化に向けた責務を再確認する。
・新しい米朝関係を構築する。
・朝鮮半島に永続的で安定的な平和体制を構築するため、共に努力する。
・4月27日の板門店宣言(南北首脳会談の宣言)を再確認する。
・戦争捕虜(POW)や行方不明兵の遺骨の回収に尽力する。
・今回の合意を実現させるため、ポンペオ米国務長官と北朝鮮高官による協議を早急に始める。
トランプ政権が絶対譲らないとしていた、北朝鮮の「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化」(CVID)には触れる文言はありません。
しかし、トランプ氏は今回、「トランプ方式」(サンダース報道官)を打ち出しました。それは、共同声明文の中に込められた以下の文言です。(上述のポイント紹介では省きました)
「新たな米朝関係の構築が朝鮮半島のみならず、世界の平和と繁栄に貢献することを信じ、また、両国の信頼関係の構築によって、朝鮮半島の非核化を進めることができることを認識し、トランプ大統領と金委員長は以下のとおり、宣言する」。
非核化を進める前提として「両国の信頼関係の構築」が明記され、トランプ氏は先に動きました。
会談後の記者会見で、北朝鮮に与える「安全の保証」の一つとしての「米韓合同軍事演習」の中止を表明(対話継続が条件)したのです。衝撃と動揺が世界に走りましたが、マチス国防長官、ハリー・ハリス前太平洋軍司令官らは支持を表明しました。
次は、北朝鮮が信頼醸成の行動を起こす番です。
完全非核化まで制裁は継続するとの歯止めを残しながら、信頼構築から始める「トランプ方式」が動き出したのです。