2018.06.08 17:00
青少年事情と教育を考える 16
地方自治体の「祖父母手帳」
ナビゲーター:中田 孝誠
最近、自治体が「祖父母手帳」や「孫育て手帳」を発行しています。子育てについて昔と今の違いを理解し、親と地域を支える子育てサポーターになってほしいというわけです。
例えば、埼玉県さいたま市が発行する『笑顔をつなぐ孫育て』は、孫育てのメリットや祖父母と親の上手な付き合い方、現在の育児の基本知識、地域で求められる祖父母世代の力などを24ページにわたって紹介しています。
熊本県の『子育てサポート 孫育て手帳』では、育児の主役は親であって、祖父母には頼りになる子育てサポーターになってもらおうというものです。妊娠から産後、育児のサポート、また乳幼児期から高校生期まで、孫の発達に合わせて必要な知恵を記しています。
横浜市の『地域と家族の孫まご応援ブック』では、地域の孫育ての役に立つような情報を掲載しています。
この他、岐阜県や石川県、広島県などでも手帳が発行されています。
写真はイメージです
最近は「三世代近居」を望む親も多く、子育てで祖父母の支援は大きな力になります。一方で、祖父母が必要以上に子育てに意見したり甘い対応をしたりして、親との関係が気まずくなることもあります。手帳を配布すれば全て解決というわけではないでしょうが、さいたま市の手帳などは反響も大きく、増刷を重ねているようです。
ちなみに、人類学には「祖母仮説(おばあちゃん仮説)」という説があります。他の哺乳類と違って人間の女性は繁殖能力が止まった後も長生きします。それは若い母親の出産・子育てを助けるため(孫の面倒を見るため)ではないかというわけです。祖母が子育てを支援することで、母親はすぐに次の妊娠・出産ができるようになるともいわれています。
そう考えると、祖父母、父母、子供という3世代家族も、人類が生き続けるための知恵だと言っていいかもしれません。