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罪のない者から石を投げよ

(光言社『FAX-NEWS』通巻811号[2003年6月14日号]「四大聖人物語」より)

 『FAX-NEWS』で連載した「四大聖人物語」を毎週月曜日配信(予定)でお届けします。(一部、編集部が加筆・修正)

▲山上の垂訓(ウィキペディアより)

 イエスの足跡は随所に残されます。エルサレムで伝道していたときのこと、朝早く、イエスは宮にいました。律法学者とパリサイ人が一人の女を引き連れてイエスに近づいてきます。

 試すようにイエスに言います。

 「先生、この女は姦淫の現場でつかまりました。モーセはこういう女は石で打ち殺せと命じています。あなたは何といいますか」

 イエスは身をかがめて、指で地面に何かを書いていました。彼らの問いかけに身を起こして言います。

 「罪のない者が最初に石を投げたらいい」。そしてまた身をかがめて、地面に書きました。

 それを聞いた年長者から、一人、また一人とその場を去っていきました。

 「皆はどこに行ったのか」。イエスは再び身を起こして、女に聞きました。

 「誰もいません」

 「私もあなたを罪に定めない。行きなさい。今からは罪を犯してはなりません」――。イエスの愛を証す聖書の話しです。

 イエスはイスラエルを巡って教えを説きます。そのつど多くの民衆が集まってきました。イエスには分かっていました。彼の下に来る人々は病気の癒やしや、ただ愛されたいという利益を求めているだけだということが。

 イエスが伝道を始めたころ、熱狂的に迎え入れた人々も、そのときだけという人が多くいました。イエスがガリラヤ湖畔の丘で語りかけたとき、人々は3日間、目を輝かせて、食べることさえ忘れてみ言に聞き入りました。このときは確かに人々の心はイエスと一つでした。

 イエスの核心に触れる「私についてきたいと思うなら、自分の十字架を負うて、従ってきなさい」「持っているものをみな売り払い、貧しい人々に施して、私についてきなさい」というみ言を聞いて、歩みが止まった者もいたのです。

 神への絶対的な信仰や愛、従順を説けば説くほど、人々の心はイエスから遠のいていきました。

 弟子たちを連れたイエスの足跡はエルサレムの北方に多く印されます。ガリラヤ湖からずっと北のツロ、シドン、そしてギリシャ人たちがさまざまな神を祭る神殿を建てていたピリポ・カイザリヤ。イエスは異教の人々にも積極的に教えを説きました。

 ピリポ・カイザリヤに向かう道で、イエスが弟子たちに「人々は私を誰と言っているか」と尋ねたときがあります。シモンは「あなたこそ、生ける神の子キリストです」と偽りのない告白をします。

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 次回は、「誰でも分かる例え話」をお届けします。