https://www.kogensha.jp

聖誕時、ユダヤの王と啓示

(光言社『FAX-NEWS』通巻786号[2003年2月10日号]「四大聖人物語」より)

 『FAX-NEWS』で連載した「四大聖人物語」を毎週月曜日配信(予定)でお届けします。(一部、編集部が加筆・修正)

▲山上の垂訓(ウィキペディアより)

 イエスは今から2千年以上も昔、イスラエルの都エルサレムの南方に、そう遠くないベツレヘムという町で生まれました。母マリアは篤い信仰心を持った清い乙女でした。3歳から12歳まで神殿で育てられ、親戚の一人、ナザレの大工ヨセフと婚約しました。

ヨセフ、ザカリヤ家庭にイエスの証し

 ある日、マリアの前に天使ガブリエルが現れ、アイン・カレムに住む彼女の姉エリザベツの元に行くように言うのです。エリザベツの夫は祭司で人望を集めているザカリヤといいます。

 ザカリヤ夫婦には長い間子供が産まれませんでした。マリアが訪れる6か月前、同じく天使ガブリエルが現れ、老いたエリザベツが子供を宿すと言い、ヨハネと名付けよと啓示します。

 マリアが急いでエリザベツに会いに行くと、お腹の子が喜んで小躍りするのです。エリザベツは聖霊に満たされて、やがてマリアが産む子はただならぬ使命を持った者であることを悟ります。

 マリアがザカリヤの家に滞在した3か月の間にマリアはイエスを宿しました。まさしく、ヨハネとイエスはカインとアベルの関係、その一体化が摂理を左右することになるのです。

 マリアの妊娠を知った夫ヨセフは正義感の強い人物でした。彼女の妊娠が公になる前に密かに離縁しようと決心します。

 ところが、葛藤(かっとう)するヨセフの夢に、またもや神の使いが現れて、「心配せずマリアを妻に迎えよ。彼女が産む子をイエスと名付けなさい。彼は民を罪から救う者となろう」と告げたのです。

 間もなく、ユダヤで人口調査が行われることになりました。ユダヤの全国民が、祖先の生まれた土地へ行って住民登録をしなければなりません。

 ヨセフは身重のマリアをロバに乗せ、砂漠のような荒れ野を越えて、やっとの思いでベツレヘムに着きました。

 町は、各地からやってきた住民登録の人たちでごった返し、空いている宿などありません。

 ヨセフはやっとのことで、町はずれにある、今は使われていない馬小屋を借りることができました。

ヘロデ王は恐れイエスの命を狙う

 その夜、マリアは男の子を産みます。「神の子」は、きらびやかな宮殿ではなく、旅先の町はずれにある、汚い粗末な家畜小屋で、ひっそりとこの世に誕生したのです。まるで後の人生を暗示するかのように。

 イエスが生まれた夜、羊飼いたちが満天の星に輝く不思議な光を見たように、東の国から来た3人の賢者も、救い主誕生を告げる星を見て、エルサレムにヘロデ王を訪ねてきました。

 「お生まれになったユダヤの王にはどこへ行ったらお会いできますか」

 ヘロデ王は驚き恐れます。――自分以外に王がいるというのか。

 王は不安を押し殺して言います。「御子が見つかったら、私にも教えてほしい。私もお会いしたいのだ」。

 3人の賢者は無事、イエスと母マリアに会い、ひれ伏して拝み、贈り物をささげました。彼らは夢で知らされていたのでヘロデ王には会わず、別の道を通って自分の国へ帰って行きました。

 王の座を失うかもしれないとおののくヘロデ王は、ベツレヘムとその一帯にいた2歳以下の男の子を、一人残らず殺す命令を出します。

 啓示で危機を知ったヨセフは、家族を連れてエジプトに逃げ、イエスの命は守られました。

 やがて何年か経って、ヘロデ王が死んだという噂を聞いたヨセフは、「子供を連れてふるさとに帰るがよい」という夢を見て、心を決めました。

 ベツレヘムまであともう少しという所まで来たとき、ヘロデ王の跡を継いだ息子のアケラオ王が、父親以上の冷酷な政治をしている、ということを耳にします。

 再びイエスの命を狙われたら大変です。ヨセフは、ガリラヤのナザレに向かうことにしました。ナザレは、イエスが生まれる前、ヨセフが働いていた町です。ベツレヘムや都エルサレムから、遠く離れているので、安心してイエスを育てられると考えたのです。

---

 次回は、「ヨハネの不信」をお届けします。