2022.06.13 17:00
コラム・週刊Blessed Life 220
ロシアはハイブリッド戦争で敗北している?
新海 一朗
今回のウクライナ戦争で、なぜ、ロシアは苦戦を強いられているのか。これには理由があるという指摘が多くあります。
それは、ロシアはハイブリッド戦争に敗れているという指摘です。
ハイブリッド戦争とは、どのような戦争でしょうか。
戦争の手段には2種類あります。一つは「軍事的手段」によるもの、もう一つが「非軍事的手段」によるものです。
戦争は、この二つが組み合わさって行われているというのです。これがいわゆる「ハイブリッド戦争」です。
従来の戦争と現代の戦争が総合的に組み合わされるとどうなるか。
①陸軍の領域 ②海軍の領域 ③空軍の領域 ④サイバースペース(コンピューター)の領域 ⑤宇宙軍の領域 ⑥認知戦(Cognitive Warfare)の領域、この六つの領域によって、現代の戦争は遂行されるということです。
特に、6番目に挙げられた「認知戦」でロシアはウクライナにやられているという見方がよく聞かれます。
認知戦とは何か。
情報空間、認知空間が「第6の戦場」とされ、情報戦、宣伝戦を効果的に展開することによって、戦争を勝利に導く戦法のことです。
そのように言うと、そういう戦いは昔からあったと言わなければならず、目新しくないと思うかもしれません。しかし現代においては、情報、宣伝による心理戦の戦いは非常にスマートになってきていて、主に、三つの領域で華々しく展開する事態になっています。
一つ目はSNS(プラットフォーム)、二つ目はスマートフォン(デバイス)、三つ目は4G回線(ネットワーク)、これらの三位一体が普及したことによって、情報(真実情報、偽情報、不確実情報など)が瞬時に拡散されることになっています。
これらの情報機器が、21世紀の戦争を根本的に変えつつあると見てよいでしょう。まるで、戦争の実況中継を観覧しているような気分で、人々は戦場の戦いを見ているのです。
戦争ですから、味方側に都合よく情報を操作し、敵側に都合の悪い情報を操作して流すという虚偽情報の合戦の様相は、古来、あまり変わらないと言っても、わざと味方側に不都合な情報を流す場合もあり(敵を欺く)、一様ではありません。
うそが有効な場合はうそを流し、真実が有効な場合は真実を流すというような、あくまでも「人間心理」の効果的な操縦を計算して情報拡散に努めます。情報リテラシーが極めて重要になることはもちろんです。
ウクライナ戦争のこれまでの経緯を見て分かるのは、ウクライナと米欧が、認知空間における戦いを優位に進めていることです。
具体的には、①メディア・専門家らによるファクトチェック ②米国政権のインテリジェンスの積極的開示 ③欧州地域におけるロシアの情報発信の制限 ④ゼレンスキー政権の対抗ナラティブ(物語)、この四つが要因として挙げられます。
①②は、主に偽情報に焦点を当て、③④は、より広範な情報戦を闘うツールとなっています。
こうして見てみると、戦争は滅多なことでは起こすことはできないという結論になります。時々刻々と戦争の経過や戦場の情報がまるで映画を見るように世界にリアルタイムで発信されるのです。
うそを流しても、専門家たちがファクトチェックしてすぐにバレます。もはや、21世紀に戦争をするなど、愚の骨頂であり、共生共栄の真実な生き方しか、世界には通用しません。戦争をしない国家であることが一番なのです。