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「性解放理論」を超えて(37)
ミシェル・フーコー①~系譜学、考古学/エピステーメー

 人類は今、神とサタンの総力戦の中に生きています。
 「統一思想」すなわち「神主義」「頭翼思想」によって生きるのか、神の言(ことば)を否定する思想を選択するのか…。
 台頭する性解放理論を克服し、神の創造理想と真の家庭理想実現のための思想的覚醒を促す「『性解放理論』を超えて」を毎週月曜日(予定)にお届けします。

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大谷明史・著

(光言社・刊『「性解放理論」を超えて』より)

五 ポスト構造主義を超えて
(二)ミシェル・フーコー

 ポスト構造主義は倫理、道徳の絶対性を否定し、性(セクシュアリティー)の多様化を主張します。そして同性愛、フェミニズムに対して大きな影響を及ぼしていますが、中でも最も影響力のあるのがフーコーの思想です。以下にフーコーの思想の要点と、それに対する「統一思想」の見解を述べます。

1)系譜学、考古学
 フーコーの思想は、その目的においては系譜学的、その方法においては考古学的です。大昔の人類の生活を研究する考古学は地中に埋もれているものを発掘します。しかし、ここで言う「考古学」とは、特定の歴史的時代が持つ特有の知識の体系を発掘することです。「系譜学」とは、過去において、私たちが今とは違った仕方で存在し、行い、考えた可能性をあらわにしようとするものです。つまり、フーコーの意図は必然的、普遍的な真理を見いだそうとするのではなくて、真理と言われるものの相対性、偶然性を検証しようとするものです。

 すなわち、フーコーにおいて、考古学とは、特定の歴史的時代が持つ特有の知識の体系を発掘することであり、系譜学とは、過去において、今とは違った仕方で存在し、行い、考えたことがあったことを明らかにしようとするものです。これは正に真理の普遍性、絶対性を土台から崩そうとする試みにほかなりません。「統一思想」から見れば、真理の表現方法は時代とともに変わり得るとしても、真理自体は神のロゴスに由来するものであって、絶対的なものです。そして、知の内容について言えば、時代とともに、より充実したもの、洗練されたものになってきたと見るべきです。

2)エピステーメー
 フーコーは「知の枠組み」、「多様な学の根底にある思考の諸様式」をエピステーメー(epistémé)と呼びます。エピステーメーは時代ごとに一つだけ存在し、時代が変わると、エピステーメーも変わると言います。

 ルネサンス期において、言葉と物は、両者の類似において結びついていました。人々は、外的な類似、すなわち「相似」という観点からものを考えていたのです。例えば、ランは睾丸(こうがん)に似た実を結ぶ。だから、ランは性病の治療に使えることが示されるとか、トリカブトの種子と眼球が似ているというしるしが、トリカブトの種子が眼病に効くという知を気づかせてくれる、というようなことです。

 古典主義時代になると、世界を計量可能な関係として秩序づけて見るようになる。その結果、「知識は、新しい空間を持った。それは推測ではなく、秩序に関するものになった。堅固で、明晰(めいせき)な同一性の分類は、表象と呼ばれている(※9)」のです。かくしてエピステーメーの重点は「表象」になったのです。

 近代に至ると、世界の背後にあって、世界を秩序づけている原理としての「人間」に注目します。すなわち「近代のエピステーメーは、人間自身を歴史的主体として研究する。……知識が可能になるのは、人間を通じてである。古典主義時代の知の表面的な規則性に、より深い諸力──ダイナミックで歴史的なカテゴリーによる解釈──がとって代わった(※10)」のです。

 そして現代は、人間が「言語」(記号)によって動かされるようになったのであり、言語の存在の前で人間の能動性が奪われ、人間は口をつぐみ、消えてゆく時代であり、かくして新たなエピステーメーは、「人間の終焉(しゅうえん)」を告げるものであると言うのです。

 フーコーによれば、エピステーメーは「知の枠組み」、「多様な学の根底にある思考の諸様式」です。カントが発見したカテゴリーは普遍的なものですが、フーコーのエピステーメーは相対化された「歴史的ア・プリオリ」なものです。しかし、フーコーにおいて、エピステーメーはなぜ不連続なのか、なぜ変化するのか、説明されていません。「統一思想」から見て、「知の枠組み」は時代とともに変わるものではありません。普遍的なものなのです。

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※9 C・ホロックス、Z・ジェヴティック、白石高志訳『フーコー』現代書館、199868
※10 同上(72)

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 次回は、「ミシェル・フーコー②~言説」をお届けします。


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