夫婦愛を育む 184
手を貸さない

ナビゲーター:橘 幸世

 4月13日付の読売新聞の「医療ルネサンス」という欄が目に留まりました。
 普段そこはスルーすることが多いのですが、アルコール依存症がテーマで「夫の問題そっと背中押す」というタイトルに引かれたのかもしれません。

 私自身は直接関わったことはありませんが、女性向け講座に来られたかたの中には、夫が依存症だと診断されたかたもおられました。

 「あるがままを受け入れる」原則についての講座で、「いくら妻があれこれ言っても夫は変わらない」「タバコをやめて、あなたのためよ。そんなに飲まないで、体を壊すから、と言ったところで一向に減らない。むしろ増える」「夫婦関係にマイナス」と話せば、皆さん、実体験からうなずきます。

 ではどうしたらいいかと問われれば、夫婦愛を育むためのもろもろの原則を実践しましょう、と答えてきました。
 実際、原則をコツコツと実践して関係が改善し、お酒が少量になったなどのうれしい報告を受けてきました。
 その経験があるので、専門家は何と言っているのかな、と思ったのです。

 新聞記事には、ある50代夫婦のケースが紹介されていました。

 元は穏やかな夫でしたが、アルコール依存症のせいで家庭は滅茶苦茶。なんとかしたいと必死の妻が、保健所が主催する家族講座を受けたところ、目からうろこだったとあります。

 「飲む飲まないは本人が決めること。放っておきなさい」

 相手に指図するのは反発を生むだけで逆効果(おお、講座と一緒だ、と私の心の声)。
 夫に声をかける時は自分を主語に(いわゆるIメッセージです。相手を主語にすると責めることになります)。

 彼女は、泥酔した夫のスーツを脱がせ布団に運ぶのも仕方ないことと思っていましたが、「過度な世話」だと指摘されます。
 よれよれのスーツで出社するなどの失敗を経験しないと、本人が断酒を考える機会を失ってしまうのだと。

 夫が単身赴任中、「出社しない」と夫の職場から連絡が来た時も、彼女は主治医から「手助けしないように」と諭されます。
 気がかりで仕方がありませんでしたが、断酒会の先輩に相談し気を静め、手出しするのを我慢します(難しい中にあっても原則を実践し抜いたんですね!)。

 10日後、夫は自分で救急車を呼び、病院に搬送されました。
 「このままでは自分の未来はない」と断酒を決意し、現在に至るまで2年飲んでいません。夫と子供たちとの関係も改善しました。

 やはり原則はどんな状況下でも貫かれていて、実践されているんだと、そして幸せな結果につながっているんだと、改めて確認させていただきました。
 手を貸す加減の判断は時に難しいかもしれませんが、この内容は、他の問題に対処する際にも参考になるかと思います。

 アメリカの小説には時折、リハビリ施設を出たり入ったりしている人物が登場しますが、そういう男性は家庭が壊れていて孤独な環境にいます。
 原則に加えて、支えてくれる人(もしくは自分が守るべき人)の有無は大きいのかもしれません。

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