孝情を育む 36
感情を受け止めて言葉で表現してあげる

家庭教育部長 蝶野知徳

 『ムーンワールド』で連載中の蝶野知徳・家庭教育部長による子育てについてのエッセーを、Blessed Lifeでもお届けします!
 孝情を育む子女教育を考える上で、どんな思いで向き合えばいいのかを端的に分かりやすく解説します。

幼少期の子女を育てるポイント
 幼少期の子供が抱く感情は、子供自身もそれが“何の思い”からそうなるのかを自覚することは難しいと言われています。つらい、悲しい、寂しいといった、誰にでもあるネガティブな感情について、実際はその思いの正体自体をつかめていないことが多いのです。

 大抵の子供は、自分の感情そのものを言葉では表現しませんから、親が子供の表情や態度から、どんなことに不満があって、どんな思いでいるのかを察してあげるのが必要です。

 例えば、友達とケンカをして「〇〇君嫌い!」と訴えて親に泣きついたとしても、本当にその友達を嫌っているわけではありません。本当は、おもちゃを取られたのか、遊びのルールを守ってくれなかったのか、仲間はずれにされたと感じたのか、経緯や理由があるはずです。

①否定せずに全部認めて受け止める
 親が、「お友達を嫌ったりしてはいけないでしょう」と頭から否定してしまうと、感情を引っ込めてしまいます。どのような理由にせよ、まずは思いを全部認めて受け止めることです。

②知りたい、教えてほしいという姿勢
 今度は、その気持ちになった理由を“知りたい” “教えてほしい”という姿勢で、心を込めて尋ねましょう。そうすれば、本人の口から経緯や理由を話してくれるようになります。

③どんな思いなのかを自覚させてあげる
 全部聞いてあげ、それであなたは「悲しかったのね」と、その感情の部分を言葉にしてそのまま返してあげます。すると子供は「自分は友達が嫌い」なのではなく、「自分は悲しかったんだ」と分かるようになります。つまり、感情を受け止めて、それを言葉にして返してあげることで、自分の心を自覚することができます。

④共感することで、次の段階へ前進
 また、その感情を共感してあげましょう。そうすることで、子供の心は“次の段階”に進むことができます。親からの「提案やアドバイス」、あるいは「善悪の判断」などについても、このような共感があれば、受け入れて聞くことができるようになっていきます。

 自分の感情を知るということは大切なことです。自分がどんな感情でいるのかが分からないまま成長すると、大人になっても自分が何を感じているのか分からなくなったり、感情のコントロールが難しくなったりする場合もあります。

 思いを尋ね、言葉で確認し、共感してあげることを意識してください。そこで安心感を得られれば、情緒が育ちやすくなります。

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 「孝情を育む」は今回が最終回です。ご愛読ありがとうございました。