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第1部 宗教改革者
①マルティン・ルター

(光言社『FAXニュース』通巻779号[2003125日号]「キリスト教信仰偉人伝 李相軒先生のメッセージに登場した人々」より)

岡野 献一

 『FAXニュース』で連載した「キリスト教信仰偉人伝」を毎週日曜日配信(予定)でお届けします。(一部、編集部が加筆・修正)

当時の教会に疑問-み言に帰ろう
訳した聖書が改革の原動力

 李相軒先生が霊界から送られたメッセージには、キリスト教史に多大な影響を与え、模範的な信仰の証しを残した人物の書簡が含まれています。それには彼らが真の父母様の生涯に感動し、統一原理に感動して、自らの生涯を振り返る姿が記されています。このシリーズは、彼らの業績に従って紹介していきます。まずは宗教改革者から。

 宗教改革といえば、真っ先に思い浮かぶのがマルティン・ルター(1483-1546)。彼は当時のカトリック教会の信仰のあり方に疑問を感じ、討論をしようと15171031日、ヴィッテンベルク城の教会の扉に『95か条の論題』を掲げました。これが宗教改革の始まりです。

▲ルターの肖像画

稲妻に神の審判を感じ修道士になる決意

 ルターはドイツ中部アイスレーベンで、農業を営む家系に生まれました。神様は石ころからでもアブラハムの子孫を起こされるように(マタイによる福音書3章9節)、名もない家系から摂理を担う中心人物を起こされました。

 ルターは、大学で法学修得を目指して優秀な成績を挙げ、父親は彼の将来に期待を寄せます。しかし彼は15057月、休暇中実家に戻り、再び大学に向かう途上で雷雨に遭います。すさまじい稲妻が近くに落ちたとき、彼は神の審判が始まろうとしていることを感じ、突如として人生を方向転換し、修道士になる決意を固めます。

 彼は父の激しい反対を押し切って、716日、修道院に入ります。ルターは持ち前の勤勉さで修道生活を送り、司祭、1512年には神学博士の学位を受け、ヴィッテンベルク大学の教授に就任します。そのときに「塔の体験」と呼ばれる出来事が起こったのです。

 彼は、修道院の塔でローマ人への手紙「人が義とされるのは、律法の行いによるのではなく、信仰による」(3章28節)を熟考する中で、神と出会うのです。そして彼は、人が救われるのは神からの恩寵(おんちょう)によるものであることを強く実感するのです。『原理講論』に「堕落人間は、彼ら自らの力をもってしては、創造理想を完成した生命の木になることはできない」とあるように、メシヤにつながる以外に堕落人間の救われる道はありません。救いとは、堕落人間自らの力によるのではないのです。

 にもかかわらず、当時の教会は腐敗し、神の御前に砕かれた魂を持って立つのではなく、人間の努力がすべてであるかのように振る舞っている…、ルターはそう感じたのです。キリストと共に生きることがすべてであるのに、免罪符がすべてであるかのような姿を見たとき、彼は「み言に帰ろう」と立ち上がりました。み言に根ざした生活に返るべきだと痛感したルターは、「聖書のみ」「信仰のみ」という原則を強く主張しました。

ときにサタンと闘いつつ聖書をドイツ語訳

 当然ルターは、カトリック側から激しく迫害されるようになります。15189月、審問に向かう際は死を覚悟したほどです。206月にはローマ法王から破門威嚇(いかく)の大教書が発せられました。その中で、彼は208月に『ドイツのキリスト者貴族に与える書』、10月に『教会のバビロン幽囚』、11月に『キリスト者の自由』を執筆して出版しました。これらが、いわゆる宗教改革の三大文書と呼ばれるルターの著作です。

 214月のヴォルムス国会での審問後、命の危険にさらされたルターは、フリードリヒ賢明侯によって助けられ、ヴァルトブルク城にかくまわれます。そこで胃腸病や不眠症が悪化するだけではなく、サタンとの激しい霊的闘いをします。あるとき、彼が聖書を読んでいたとき、壁ぎわにサタンを見つけ、インク壺を投げつけたとも伝えられています。そのような試練の中で彼は聖書をドイツ語に翻訳し、やがてドイツ語聖書を出版したのです。

 これらのルターの著作集、ドイツ語訳聖書が宗教改革の大きな原動力となって、またたく間に宗教改革の嵐が全ヨーロッパへと波及していきました。

 真のお父様はルターの宗教改革に触れておられます。

 「本を配って、一緒に読みながら解説すればよいのです。本を持って革命を起こさなければなりません。…ルターが宗教革命をするとき、本で革命を起こしたのと同じです。すでに準備されています。…言論媒体を通して宣伝するのです。人間を通してではありません。…言論媒体を通して一晩の間に世界のバランスがとれます。そのような時代に入っています」(1994年11月3日)。

 私たちもルターのようにみ言を訓読し、一大革命を起こそうではありませんか。

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 次回は、「ジャン・カルヴァン」をお届けします。