コラム・週刊Blessed Life 211
勝ち負けを超えて、共生型の世界へ移行すべし!

新海 一朗

 ウクライナ戦争という思いもかけなかった事態とその進行を、人類は連日連夜のように見つめ、また、メディアも熱烈な報道を展開しています。
 慌てふためく各国の首脳たちの言葉や姿に、解決策を失った彼らの苦悩と狼狽(ろうばい)ぶりを、誰もが感じ取っているはずです。

 戦争の善玉、悪玉を論ずるのは世の常です。戦争における戦勝国と敗戦国が、最終的に自分が期待したように決着し、確定されることを人は無意識に願うものです。
 しかし時々刻々、メディアによって知らされる戦況からは、戦争の悲劇を映像と共に知るだけのことであり、戦争に勝ち負けはない、共に悲惨であるという戦場の惨劇を思い知らされるのです。
 勝つにせよ、負けるにせよ、戦争の被害は甚大です。戦争は勝ち負けで単純に論じることはできません。

 ウクライナから国外に逃れた難民は、すでに400万人を超えたとUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)は発表しています。ヨーロッパ各国の受け入れが大変な状況にあることは言うまでもありません。

 ウクライナのマリウポリは激戦地になっており、死者5000人を出し、57の学校と70の幼稚園が破壊され、住宅の90%が破壊されているという状況ですから、灰燼(かいじん/全焼)に近いと言えます。
 すでに29万人が避難して町を離れ、取り残されている人々が17万人いるといいます。水道は壊され、水が出ません。どうやって生きていくのでしょう。

 戦争を始めたロシアですが、戦争はとにかくお金のかかるものです。
 ロシアは19万人の兵士を戦場に送り出しました。その戦費たるや、一日2兆円といいます。すでに戦争を始めてから40日たっていますので、80兆円が吹き飛んでいる計算です。

 このような状態で進んでいくと、ロシア経済の民生部門(国民生活)は大変な圧迫を受けます。何よりもロシア国民の生活が犠牲になり、戦争に対する国民の疑問も当然大きくなります。戦争が長引くほど、ロシア経済が国家的な危機状態になるのは目に見えています。

 ウクライナのゼレンスキー大統領は、各国議会(EU〈欧州連合〉議会、英国、カナダ、米国、ドイツ、イスラエル、イタリア、日本、フランスなど)のオンライン演説で、ウクライナの惨状を語り、支援してほしいと声を大にして語りました。
 日本に対してはそれほど批判的なスピーチ内容ではなかったものの、他の所では、非常に激しい糾弾的な響きがあり、なぜ支援してくれないのだという讒訴(ざんそ)の声ともいうべき内容が主たるものでした。

 自分は欧米のために戦っているのだ、NATO(北大西洋条約機構)もEUも米国も傍観的ではないかというのです。
 ウクライナが盾となってロシアを食い止めているのに、ロシアの盾としてウクライナを利用するだけ利用して本気で支援してくれない欧州や米国は一体何だと、非常に手厳しいスピーチをまくしたてているのです。
 一歩下がったところにいるだけでは駄目だというゼレンスキーの本音丸出しの言葉を欧米諸国はどんな気持ちで聞いたのでしょうか。

 結局、戦争という事態がどういう原因であれ、引き起こされた結果、必死で戦っている二つの当事国とそれらのどちらか一方を支援する国々があるにせよ、これらの国々が本気で問題解決に取り組めないならば戦争など初めからするなという論理的帰結があるだけです。
 そうであるならば、各国は無意味な戦争ではなく、勝ち負けを超えた共生型の世界を最初から目指せという結論になるのです。