夫婦愛を育む 176
集中力や自制心に影響が…?

ナビゲーター:橘 幸世

 新聞に今年のベストセラー本のリストが載っていました。その第2位にあったのが『スマホ脳』。スウェーデンの精神科医アンデシュ・ハンセン氏が著したものです。
 通常は私の関心外の分野ですが、塾の生徒たちと接していてずっと気になっていることがあり、手に取りました。

 接している高校生はほんの一握りですので確かなことは言えませんが、ひと頃と比べて語彙(ごい)力が落ちていると感じて久しいのです。

 たまたまそういう生徒が来ているだけなのかもしれませんが、女子生徒は気が散りやすい子が多いようです。言い換えれば“集中力”がない。前回授業でやったことの記憶も怪しくなってきています。進学校に進むだけの素地を持った子たちだけに、スマホの影響を疑っていました。

 本を手に取ったもう一つの理由を白状しますと、スマホデビューがつい2、3年前の私自身にも負の影響を多少なりとも感じていたのです。

 読んでみると、進化論に根差した脳科学的説明ですので抵抗を覚えつつも、(内容の是非は別として)分かりやすく、説得力がありました。

 多くの人はスマホが手元にあるだけで、そこに気を取られ、集中できなくなりがちです。40代後半の著者自身、本を集中して読むのが難しくなった、と告白しています(そういえば私も?)。

 記憶が定着するには集中が必要だ、とありました。生徒が授業で習った時点では理解し(本人は分かってうれしそうです)、問題も解けるのですが、1週間後には記憶が曖昧なのが珍しくないことと関連はあるのでしょうか。

 心身共に成長途上にある彼らを見ていて、この先どんな影響が出るのだろうかと思わずにはいられません。

 また、セルフ・コントロールをつかさどる脳の部位は最後に成熟すると書いてありました。長時間のスマホ使用はその成熟を妨げているとのこと。我慢が苦手な大人になっては困ります。

 「子どもの脳への影響は神のみぞ知る」と、フェイスブック(Facebook)初代CEO(最高経営責任者)、ショーン・パーカー氏が言ったそうです。
 フェイスブックの「いいね」機能の開発者ジャスティン・ローゼンスタイン氏は、開発時には想像もしなかった悪影響に気付き、自ら利用時間を制限することを決めました。依存性ではヘロインに匹敵するからと。

 アルコールは年齢制限があるのに、どうしてスマホにはないんだ、と訴える人もいます。日本のメディアでもスマホ依存は時折取り上げられていますが、具体的な対策はまだ個々に限られています。学校でも使用ルールを定めるにとどまっているかと思います。

 これを書いているまさにその時、帰宅した主人がつけたテレビで、ある大学准教授が主催する“脱スマホ依存キャンプ”の様子が紹介されていました。参加者の多くは小学校高学年~中学生くらいに見えます。

 ここ10年で、多くの人にとって不可欠な存在となったスマホ。その賢い付き合い方を真剣に模索する必要があるかもしれません。
 タイミングを見て、スマホが与える学習への負の影響とデジタル・デトックスについて生徒と話をしてみたいと思っています。

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