2018.05.08 12:00
世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~
第6回 危うし!台湾
渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)
「世界はどこに向かうのか ~情報分析者の視点~ 」は、毎週火曜日の配信を予定しています。前週の内外情勢のポイントとなる動向を分析、解説するコーナーです。
4月30日から5月6日を振り返ります。
安倍首相が中東を訪問(4月30日~5月2日)。ドミニカ共和国、台湾との断交を発表(5月1日)。米中通商協議が開始(5月3日~5日)。マルクス生誕200年(5月5日)。
今回は、台湾問題を扱います。
中国の王毅外相とドミニカ共和国のバルガス外相が5月1日、国交樹立についての文書に北京で署名しました。もちろん、台湾とは断交です。
台湾に蔡英文政権が発足した2016年5月以降、アフリカのサントメ・プリンシペ、中米のパナマ、今回のドミニカ共和国が断交しました。
背景にあるのは習近平政権の介入です。中国が主張する「一つの中国」原則を受け入れない蔡政権を国際社会で孤立させるため、外交関係の切り崩しを続けているのです。
ドミニカ共和国については昨年11月、中国が水力発電所建設などに8億2000万ドル(約900億円)を投資する計画を発表していました。台湾の高官は、中国が31億ドル以上の投融資を提示したとの見方をロイター通信に語っています。
現在、台湾が外交関係を持つのは19カ国です。蔡氏は5月1日、「こんなやり方は両岸(中台)関係の現状を破壊することになる。中国が地域の責任ある大国として取るべき態度ではない」と非難しています。
また、今月開催予定の世界保健機関(WHO)総会も、台湾のオブザーバー参加の見通しが立っていません。今後、台湾が欧州で唯一外交関係を持つバチカン(ローマ法王庁)も、中国と国交樹立するのではないかとの観測があります。
習政権による軍事的圧力強化も加速しています。4月12日、習近平中央軍事委員会主席は、同国海南省三亜で、初の空母「遼寧」を含む艦艇48隻などが参加する「中国史上最大規模の観艦式」を行い、武力による威嚇を行いました。
主要メディアは、台湾との関係強化を進めるトランプ米政権への不満の表れでもあるとしていますが、順序が逆です。
昨年10月の党大会で、「二つの100年」計画が承認されました。中国共産党創党100年(2021年)と中華人民共和国建国100年(2049年)です。かねて「2020年までの台湾統一」を掲げてきた中国です。その動きが本格化したということなのです。