2018.05.01 12:00
世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~
第5回 南北から米朝、そして日朝首脳会談へ
渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)
「世界はどこに向かうのか ~情報分析者の視点~ 」は、毎週火曜日の配信を予定しています。前週の内外情勢のポイントとなる動向を分析、解説するコーナーです。
4月23日から29日を振り返ります。
南北首脳会談開催(27日)。インド・モディ首相が訪中、印中首脳会談(27、28日)。米独首脳会談を米国で開催(27日)。ASEAN(東南アジア諸国連合)首脳会議をシンガポールで開催(28日)。日韓首脳電話会談で文在寅大統領が拉致問題を金正恩委員長に伝えたことを確認(29日)、などがありました。まさに歴史的な一週間でした。
今回は、南北首脳会談を取り上げます。韓国メディアでも評価は分かれていますが、米朝首脳会談さらに日朝首脳会談への「橋渡し」の役割は果たせたといえます。安倍晋三首相は「北朝鮮の非核化について真剣に議論したこと」に歓迎の意を表し、トランプ大統領は「完全な非核化を通じ、核のない朝鮮半島を実現するという共通の目標を再確認」との宣言内容を評価しました。
しかし両氏にとって、これらの文言が「軽い」ことは熟知しており、具体的な非核化を実現するプロセス(時期と方法)については、後の米朝首脳会談で実質的な内容を達成しようとしているのです。
「軽い」という意味は、1992年の南北非核化共同宣言や2005年9月19日の6者協議の「共同声明」以上ではないからです。
30日になって、主要メディアが一斉にトップニュースで伝えたことがあります。それは、南北首脳会談で「拉致問題」がどのように取り上げられたのかという点でした。
報道によれば、29日の日米首脳電話会談で、文大統領から安倍首相に次のように伝えられたといいます。
文氏が正恩氏に「安倍首相は北朝鮮と対話する意志を持っており、歴史清算を基盤とした日朝国交正常化を望んでいる」と伝えると、正恩氏は「いつでも日本と対話する用意がある」と応じた。さらに会談で、日本人拉致問題を取り上げ、拉致被害者が日本に帰国できるように最善を尽くそうとする安倍首相の意向も伝えた―。(読売4月30日)
日韓米、それぞれが役割を果たしながら、米朝首脳会談、日朝首脳会談へと歩を進めることになったのです。最悪の事態を想定しながらも、北朝鮮の非核化実現に1%の可能性でもあれば、全力で追求するのが「政治」であると信じます。