コラム・週刊Blessed Life 195
中国よ、北京オリンピックは大丈夫か?!

新海 一朗

 中国は、言うまでもなく共産主義国家です。ソ連をはじめとした共産主義国家は、例外なく、彼らの理想とする国家体制を整えていく過程において、外国勢力からいろいろと干渉を受け、邪魔されることを非常に嫌ってきました。現在は、特に中国がそうです。

 その外国勢力とは、主に西側諸国のことであり、民主主義を掲げている国家群のことです。民主主義には、基本的に言論の自由があり、自由に物を言う、物を書くといったことが許されるわけですが、現在の中国にはそれがありません。
 中国共産党にとって都合の悪いことは、当然、国内の人民にも知らせないし、ましてや外国の人々にも知られたくないので、非常に厳しい言論統制を敷くことになります。

 それでも、都合の悪いことは誰かが口を滑らせたり、写真を撮ったり、盗聴したり、といった具合に、公に流出する危険性をはらんでおり、何らかのルートから海外メディアに知られることになって、大騒ぎに発展することがあります。

 現在、そのような事件が発覚し、北京政府は大慌てで、もみ消しを図る事態になっています。それが、彭帥という女性テニス選手に関わる醜聞であり、北京オリンピックの開催を前に大きな問題になっているのです。

 彼女は、ウィンブルドンや全仏オープンなどでもチャンピオンになった中国を代表する国際的なテニスのスター選手です。その彼女が、今年の11月2日、彼女に起きた被害告白を行いました。それは張高麗から性的暴行の被害を受けたという告白で、この告白を行った後に、彼女は消息不明になったのです。

 張高麗とは、中国の最高指導者層の一人であり、2013年3月から2018年3月まで、国務院の副総理(副首相)を務めた人物です。当時、国務院総理は李克強でしたから、李克強と張高麗のコンビで、国務院を取り仕切りました。国の最高権力と最高行政を執行するところですから、大変な役割の位置にあった人物です。

 習近平の政権で、張高麗はうまく立ち振る舞ったと言えますが、江沢民との関係が強く、一応、江沢民派と考えていいでしょう。
 中国の最高指導部に属する人物たち(「チャイナセブン」などと言われる)が起こす醜聞は、どんなことがあっても封じなければならないという意識が働きます。それは皆「同じ穴の狢(むじな)」だからです。

 北京オリンピックに対する欧米の外交圧力(首相や大統領などのトップが北京に行かない)が加わってきている中、香港やウイグルの人権問題に加えて、ここに、彭帥事件まで出てきて、その対応にあたふたしている中国共産党、北京政府です。

 インターネットは規制すべしとの中国の姿勢が強いのは、ネットの安全がなければ、国家の安全はないという習近平の哲学があり、それがさらなる言論統制強化につながっています。

 北京五輪を何としても成功させなければならないという当局の緊張感をよそに、とんでもない醜聞が出てきてしまった背景は、一体、何か。
 ただの偶然か、それとも仕掛け人がいるのか。仕掛けがあるとすれば、習近平政権に赤恥をかかせる意図を持った何者かが、動いているのか。彭帥自身が何となくこの時期に告白したくなったのか、謎は深まるばかりです。