コラム・週刊Blessed Life 194
共産主義国家に人権はない!

新海 一朗

 人権問題で世界各国から包囲網に追い込まれ、国家の威信を失う事態を非常に恐れているのが、現在の中国共産党政権です。
 とにかくイメージを落としたくない、民主主義よりも共産主義の方が優れている、中国にもいろいろ問題はあるが、欧米の民主主義の方がもっと多くの矛盾を抱えている、中国への反論や糾弾は許さないと言いたいわけです。

 しかし共産主義国家の実態を見ると、人権が恐ろしく蹂躙(じゅうりん)されてきた歴史を持っており、決して人権を尊重しているとは言えないのです。

 「プロレタリア独裁」という言葉が示すとおり、共産主義の最終的な理想が完成するまでは、ブルジョアジーへの反対、またはブルジョアジー的要素の萌芽(ほうが)を撃滅する必要から、「独裁」という形を取らざるを得ない、すなわち、独裁は必要なのだと考えるのが共産主義の特徴なのです。

 共産主義国家は例外なく、人民の反対や暴動を決して許さないという姿勢で人権を抑圧してきました。革命によってひとたび政権を握ると、共産主義思想を人民に教え込み、反対者は強制収容所に入れて思想教育を施し、徹底した思想改造を行うということをやってきました。力で人々を抑え込み、自分たちの思想を強要するというのが共産党の手口です。

 共産主義よりももっと信奉するものがあるという人々、例えば神を信じる宗教者たちを憎み、粛清してきました。同じ共産主義者の仲間同士でも、考えが違ったりすると、相手を死に追いやるまでお互いに権力闘争するという過酷な一面を見せます。

 スターリンとトロツキーの対立がそうでした。毛沢東と林彪や劉少奇の闘争もそうでした。自分と対立する存在を許さないというのが共産主義の本質です。民主主義的な選択の自由はありません。

 独裁を実現するために「恐怖」をフル活用します。反対したらどうなるかということを人民に示すやり方です。その典型は公開処刑などですが、恐怖を起こさせるために「恐喝」「脅迫」という手口をしばしば用います。このような脅しの手段の前に人民は大抵無力です。

 この「恐喝」「脅迫」という脅しのやり方を国際関係、すなわち、国と国との交渉事や紛争でもよく使いますが、中国が対立する国に圧力を加えるやり方、反対するとどうなるかを暗に知らしめるやり方は、共産主義者の常とう手段です。恐怖を与えるのです。強い心がなければ、個人も国家もやられてしまいます。

 今回、ICPO(国際刑事警察機構)の新しい総裁にUAE(アラブ首長国連邦)のアハマド・ライシ氏が選出され、また、執行委員に中国の胡彬郴氏が選出されたことが話題になっていますが、二人に関しては、かねてから人権軽視の懸念が指摘され、監察官として信頼できないという批判の声が上がっています。

 中国は、国連機関を利用して、自国に有利なように国際問題を解決しようという野心を示しています。すでに、15ある国連の専門機関のうち4機関のトップが中国人です。

 ICPOの重要なポストに中国人が就けば、中国に都合の悪い中国人(反体制、反中国を叫んでいる国外にいる中国人)などを、いろいろな理由を付けて逮捕し、中国に連行することなどが考えられます。

 こうして容赦なく、中国の人権弾圧を叫ぶ中国人をICPOの権威で逮捕する可能性を否定できないのです。
 共産主義国家に人権などは決してありません。