青少年事情と教育を考える 175
非認知能力を育むアタッチメント(愛着)

ナビゲーター:中田 孝誠

 「非認知能力」と「アタッチメント(愛着)」についてたびたび取り上げてきました。
 子供は養育者(多くの場合は母親)と愛着関係を築き、それを元に社会性や感情コントロールの力を身に付けていくといわれています。

 このことについて、今年6月に出版された『子どもの発達格差~将来を左右する要因は何か』(森口佑介著、PHP新書)に興味深い指摘があります。著者の森口氏は心理学者ですが、本書の中で非認知能力について分析しています。

 非認知能力という言葉は社会や教育現場で広く使われるようになっていますが、内容がもう一つ漠然としているという批判もあります。

 そこで、森口氏は本書の中で非認知能力について整理し、後の学力や友人関係など子供の未来につながる「社会情緒的スキル」を取り上げています。
 社会情緒的スキルには、自制心(実行機能)や忍耐力(やり抜く力)、社交性、思いやり、自尊心などがあります。

 そして、こうした能力を身に付ける際の中核になるのが乳幼児期に形成されるアタッチメントだと述べています。
 アタッチメントを中核にして、自制心(実行機能)や他者理解、向社会的行動(他者の利益になるように行動する)のスキルが発達するというわけです。

 本書は、子供たちの将来に影響を与える上記のような能力の発達格差によって、子供たちの間に「今を生きる」子供と「未来に向かう」子供の二極化が起きているとして、支援の必要性を訴えています。

 発達格差をもたらす要因の一つがアタッチメントの有無にあるとすれば、家庭の父母や養育者が子供にどう関わるかを支援することが重要になります。
 子育て家庭への経済的支援とともに、こうした点についての啓発ももっと強調されるべきだと思います。