2021.10.03 13:00
孝情を育む 17
よく手が出てしまう子
家庭教育部長 蝶野知徳
『ムーンワールド』で連載中の蝶野知徳・家庭教育部長による子育てについてのエッセーを、Blessed Lifeでも隔週でお届けします!
孝情を育む子女教育を考える上で、どんな思いで向き合えばいいのかを端的に分かりやすく解説します。
暴力的な子?
子供が、兄弟や友達に怒って、よく手を出すという悩みを持ったお母さんがいました。お母さんは善悪をしっかり教えようと思い、「それは悪いことだからやってはいけません」と、そのつど叱ってやめさせていましたが、一向におさまらないのだと言います。
親は、あまりにそれが続くと「この子は元々暴力的な子なのだろうか」と心配になってきます。思いどおりにいかないと、すぐ人に手を出すというのは、自制心がないとか、生まれつき暴力的な子だとか、そういうわけではありません。お母さんに言いたいことが言えていないことが多いのです。これは気の小さい子に多いようです。気持ちの表現が苦手で、甘えたくても甘えられない、いわば“悲しみ”のような感情が蓄積されているのです。
自分の持つ悲しみを伝えている
幼い頃から、お母さんに叱られてばかりいると、悲しみの思いは溜まる一方なので、欲求不満となり、悪循環を生みます。
誰かに手を出すことで、相手を悲しませ、泣かせることで、自分が持っている悲しみを伝えようとして起こすのです。中高生や成人後の家庭内暴力なども、基本的には同じことです。ですから、叱ってばかりいたり、伝えようとしている悲しみに対して無視したりして、気づかずにいると、暴力はおさまるどころか、ますますひどくなっていくのです。
叱るより、ただ抱き締める
兄弟でたたいた側とたたかれた側がいる場合、たたかれた子にももちろん、慰めが必要ですが、たたいた子のほうをしっかり抱き締めて、その悲しみを解くことが良いのです。
二人の子供の関係が問題なのではありませんから、仲直りさせる必要もありません。そこに労力を使うのではなく、たたいた側の子を、ただしっかりと抱き締めてあげてほしいのです。そして家では、極力、手を出してしまう子供との時間を多く持つことが大切です。甘えさせるのです。子供にしてほしいことを聞いて、できることは何でもしてあげるのです。これはぜいたくをさせるということではなく、時間と、お母さんの心、手間、体を使って、遊んであげたり、会話をしたりして、悲しみの思いを解いて喜びに満たしてあげるのです。そうやっていくならば、手を出す癖などは、必ずなくなっていきます。
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次回は、「大切な三つの時間」をお届けします。