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コラム・週刊Blessed Life 184
北朝鮮、再びミサイル発射!

新海 一朗

 韓国軍によると、北朝鮮は9月15日昼、内陸の平安南道陽徳郡付近から日本海に向け、短距離弾道ミサイル2発を発射しました。

 岸信夫防衛相によれば、いずれも石川県・能登半島沖にある舳倉島から北方約300kmの日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下したと見られます。
 菅義偉首相は「わが国と地域の平和と安全を脅かすもので言語道断だ」と述べ、国連安全保障理事会の決議違反との認識を示しました。

 北朝鮮は9月11日、12日の両日にも新型の長距離巡航ミサイルの発射実験を実施しており、2時間以上飛行し、1500km先の目標に命中したと発表しています。北朝鮮が15日の実験のような短距離弾道ミサイルを発射するのは今年3月以来のことです。
 北朝鮮は、巡航ミサイル(9月11日、12日発射)に続く弾道ミサイルの発射(9月15日発射)で、核・ミサイル開発を含む軍事力強化を進める姿勢を改めてアピールした形です。

 北朝鮮は核・ミサイル開発を継続してきましたが、初の米朝首脳会談が行われた2018年以降は、米国などを強く刺激しかねない核実験や長距離弾道ミサイル試射は自制しています。
 ただ、短距離弾道ミサイルは定期的に発射しており、バイデン米政権発足後、今回が2回目となります。朝鮮中央通信によると、金与正・朝鮮労働党副部長は9月15日夜に談話を発表し、ミサイル発射は「自衛的な活動だ」と訴えました。

 岸防衛相は15日夜、防衛省内で記者団に、北朝鮮が発射した弾道ミサイルは最高高度50キロの変則軌道で、約750km飛行したと推定されることを明らかにしました。海上保安庁は当初、EEZ外に落下したと見られると発表していました。

 北朝鮮ではこのところ、深刻な食糧難や経済危機が報告されていましたが、それでも兵器開発は可能だということが、今回示されたわけです。

 朝鮮中央通信は、「国の安全をより確実に保障し、敵対勢力の軍事行動を強力に封じ込めるための、効果的な抑止力をまた新たに保有する」という「戦略的重要性」が、今回の巡航ミサイル実験(9月11日、12日)で得られたと説明しています。

 金正恩氏は、北朝鮮が食糧不足に直面していることを認めています。支援団体からは、国民が飢え死にし始めており、経済は崩壊寸前だとする報告がなされています。そのような最中での、15日の日本海に向けての2発の短距離弾道ミサイル発射実験ですから、正気ではありません。

 金正恩氏の精神はどうなっているのか。極貧にあえぐ経済の中で、弾道ミサイルや巡航ミサイルの発射実験を断行する目的は一体何か。

 金正恩氏は、トランプ政権の時にはアメリカとの対話による和解の道(2018年6月12日、シンガポール会談)を求めていました。しかし一転してバイデン政権になると、ミサイル発射実験を再開しました。

 このことは北朝鮮がアメリカに対して強く出ている証拠ですが、これはアメリカとの対話が進まない中でバイデン政権がオバマ政権時代の「戦略的忍耐」に戻ってしまい、対話の機会を失ってしまうことを怖れたからなのです。アメリカの気を引くためのミサイル実験なのです。バイデン政権はどのように対応するのでしょうか。

 北朝鮮といい、アフガニスタンといい、バイデン政権の外交は全て裏目に出ている傾向があります。一歩間違えば、「世界を平和への道ではなく、戦争への道に駆り立てる政策判断をする政権である」ということを忘れてはなりません。