夫婦愛を育む 169
それは思い込みでしょ?

ナビゲーター:橘 幸世

 知人との会話の中で、私がある人について「~という立場だと思うけど」と言うと、「本人に確認したわけじゃないですよね? 橘さんの思い込みでしょ?」と返ってきました。
 「まあ、確認はしてないけれど、状況から見てそうだと思うよ」と言っても彼女は納得しません。

 なかなかはっきり言う人だなぁと感じましたが、後になって「技術系で働く彼女、会社でそうやって鍛えられてきたのかもしれない」と思い至りました。仕事に責任を持てば、中途半端な判断で行動するわけにはいきません。

 その後、親族関係の用事で主人の母に付き合いました。
 母が「◯◯さんはこういうつもりなんだと思う」と言うので、「でも、お母さん、◯◯さんが実際にそう言ったわけではないですよね?」と先日の知人との会話を思い出しながら私が聞くと、「言ってないけど、私には分かる。私の勘だ」と母。「おっと~」と内心で反応する私がいます(もちろん、勘が当たることもありますが)。

 仕事上はもちろん、人間関係においても、それまでの経験と相手への印象だけをもとに下す自分なりの判断は危ないな、と再認識させられました。
 良い印象を持っていれば好意的な判断を勝手に下すでしょうし、ネガティブな印象を持っていればあまり良くないことを想像しかねません。

 時には、思い込みから決めつけに至ってしまうこともあり得ます。
 大学に入りたての頃、教授が「人間は皆色眼鏡をかけて物を見ている。色眼鏡を外して見られる人が天才だ」と語ったのを、これを書きながら思い出しました。

 子供の頃に裁縫用語として覚えた「バイアス」という言葉が、近年先入観や偏りの意味になって耳にすることが増えました。感情があるので、完全にバイアスなく人や物事を見るのは不可能に近いですが、「思い込みかも?」と自問することが失敗を防ぐ第一歩かと思います。

 拙速な判断を避けるには、やはりしっかりコミュニケーションをとって十分な情報を得ることが望ましいです。
 身近な人の中にも、コミュニケーション不足から大事なことを知らないまま限られた情報で判断し、後で後悔した姿を見てきました。そして相手との関係も難しくなったのです。「ああ、そのことが分かっていればこうしただろうに」と思わずにはいられませんでした。

 「思い込み」の対象は、何も他人だけではありません。自分自身への思い込みもあります。
 「自分なんか…」と否定的に己を見ていれば、人の好意を素直に受け止められないこともあるでしょう。いつの間にかできた自分の“枠”から出られず、訪れたチャンスをつかむ勇気を持てないかもしれません。逆に、慢心も危険ですね。

 まずは自分への既成概念を捨てて枠を外し、自分を客観的に、かつ優しい目で見るのがいいのではないでしょうか。

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