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【テキスト版】
ほぼ5分でわかる介護・福祉QA

第16回 高齢者福祉編
介護で家族に迷惑を掛けないようにするための予防の仕組みはありますか?

ナビゲーター:宮本 知洋(家庭連合福祉部長)

(動画版『ほぼ5分でわかる介護・福祉Q&A』より)

 今回は、「私は今年65歳となり、高齢者の仲間入りをしました。今はまだ介護が必要な状態ではありませんが、将来、要介護となって子供たちに迷惑を掛けないかと心配です。そうならないための予防の仕組みはありますか?」という質問です。

 高齢者のかたから、「将来、介護で家族に迷惑を掛けたくない」という声をよく聞きます。
 「高齢になっても、住み慣れた所で元気に自立して生活したい」というのが多くのかたがたの願いではないかと思います。

 さて、要介護状態になってしまう原因は何が多いかご存じでしょうか。
 実は、重篤な病気にかかってしまうことよりも、加齢によって衰弱する、運動能力の低下による転倒や骨折で身体機能や生活機能が低下する、認知症を発症する、高齢となって生活意欲が低下するなどが原因となる場合が多いのです。

 例えば、定年退職した後、社会との関わりが急激に減って、生きがいを失って閉じこもるようになり、活動量が低下し、緊張感もなくなった結果、認知症を発症してしまうということが実際に起こっています。

 このような内容については、毎日の生活を少し変えるだけで、予防したり、状態が悪化することを食い止めたりすることができるかもしれません。

 意識するポイントは、
・食生活を見直し栄養面の改善を図ること
・体操やレクレーションなどを通じて運動能力の低下を防ぐこと
・社会参加の機会をつくり、人との会話を増やすこと
・口腔機能の向上を図ること
 などです。

 これらをしっかり行うことで、要介護状態までの期間を遅らせたり、状態を軽くしたりすることができます。

 現在、日本では高齢者人口の増加を見据えて、多種多様な介護施策が導入されていますが、その中でも「介護予防」は重要なテーマの一つです。

 国は、介護予防の目的を、高齢者が「要介護状態になることを未然に防ぎ、できるだけ遅らせること」、または、既に介護が必要な人は「状態が悪化しないように努め、改善することを図ること」とうたっています。

 これは、各市町村が地域の実情に応じた内容を決定し実施する「地域包括ケアシステム」の事業の一つとして位置づけられ、「介護予防・日常生活支援総合事業」、いわゆる「総合事業」として2015年に始まりました。

 この事業には既存の介護事業者以外に住民ボランティアやNPO(非営利団体)、民間企業なども参入しており、地域全体で高齢者の暮らしと健康を支えていく仕組みとなっています。

 総合事業には、要介護認定の結果、要支援12と判断されたかたが利用する「介護予防・生活支援事業」と、65歳以上で介護認定を受けていないかたも利用できる「一般介護予防事業」があります。

 介護予防・生活支援事業には、訪問型サービス、通所型サービス、その他の生活支援サービス、および介護予防ケアマネジメントなどがあります。

 一方、一般介護予防事業には、健康セミナー、認知症予防講演会、栄養講座、気楽に集えるサロンの開設、生きがいづくりを目的としたサークル活動、体力づくり教室、絵画や料理などの趣味の会の開催など、多種多様なプログラムがあります。

 総合事業は、高齢者が住み慣れた地域でより充実した日常生活を送り、なるべく介護を必要としない暮らしが続けられるよう支援するためのものです。
 ぜひ、上手に活用していただけたらと思います。

 なお、総合事業は各市町村が主体となって行うため、内容や費用、対象などは地域差があります。
 詳しくは住所地の地域包括支援センターの窓口で聞いてみてください。