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~情報分析者の視点~

東京都議選告示、政治決戦スタート

渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)

 今回は、6月21日から27日までを振り返ります。

 この間、以下のような出来事がありました。
 習近平主席、イラン新大統領に祝意(21日)。金与正氏「誤った期待」と、米をけん制(22日)。日本・最高裁大法廷、夫婦別姓を認めない民法などの規定は憲法に違反しないとの判断を示す(23日)。香港、蘋果(リンゴ)日報、最後の朝刊(24日)。東京都議会議員選挙が告示される(25日)、などです。

 東京都議会議員選挙が6月25日、告示(衆参の選挙では公示を使う)されました。都内42選挙区、127議席の獲得を巡って9日間の熱い選挙戦が始まりました。投開票日は7月4日です。

▲東京都議会(議事堂)

 都議会議員選挙を巡る環境は一変しました。
 最大の要因は新型コロナウイルスの感染拡大です。対策に当たる小池百合子都知事は過労のため静養中。告示日に、自身が創党した都議会第一党である地域政党「都民ファースト」(都民フ)の候補者支援の街頭に立つことはありませんでした。

 静養中ということもありますが、都議選では小池氏は動かない(動けない)との観測が事前にありました。理由は以下の3点です。

① 4年前の都議選では対決した自民党(自民)だが、昨夏の都知事選で関係を修復し実質的な支援を受けた。

② コロナ対策のため、政権与党の自民との連携は不可欠となった。

③ 東京五輪・パラリンピックでも政権与党との連携が不可欠である。

 都議選の注目点を挙げてみます。
 前回は「都民フ」と共闘した公明が、今回は自民と共闘します。小池氏の支援も受けられない「都民フ」の大幅議席減は避けられず、10議席を割る可能性(現有46)もいわれています。

 共闘する自民と公明の目標は両党で過半数の獲得です。64議席以上となります。
 自民の議席は50議席前後が見込まれますが、問題は公明です。公明は1993年以来、全員当選を貫いてきましたが、今回は厳しい状況です。何よりも全国動員を掛けて東京に集中する「人海戦術」がコロナ禍で取りにくいのです。

 支持母体・創価学会の集票活動はこれまで、春の大型連休に合わせて学会員が全国から上京して支援を呼び掛ける「全国応援」を展開してきました。しかし今回は見送られました。
 公明の告示前の情勢調査では、候補者の3分の1程度が当選外の「圏外」だったといいます。公明・石井幹事長は14日、全国会議員に「関係先を全て固める戦い」を迫る緊急連絡を通知しています。

 最も注目すべきは、立憲民主党(立民)と共産党(共産)の共闘です。候補者の一本化を進めています。
 「野党議席が一つでも多くなるよう、定数1~3の選挙区では、共産とも水面下でさまざまな調整をしている」と4月15日、手塚仁雄(よしお)立民都連幹事長は語っています。

 5月3日時点では、立民・共産の候補者がどちらかのみが19選挙区、競合しているのが18、どちらもなしが5でした。両党が選挙区すみ分けを水面下で本格的に進めた場合のプラス効果がどういう数となって現れるのか注目されます。

 両党は、自党の勢力の拡大を模索しながらも次期衆院選での選挙協力も見据えて実効力のあるものとしようとしているのです。

 都議選結果が政局を動かす例が、これまで幾度もありました。いくつか挙げてみます。

① 平成元年(1989)7月の都議選で自民は20議席減となり、土井たか子氏率いる社会党が躍進。その結果、1カ月後の参院選で社会党が大勝し、自民党は初の過半数割れに追い込まれ、宇野宗佑内閣は退陣。

② 平成5年(1993)6月の都議選で日本新党が「新党ブーム」で20議席を得て躍進。7月の衆院選で自民が結党以来初めて野党に転落。細川護熙氏を中心とする非自民連立政権が誕生。

③ 平成21年(2009)の都議選で、民主党が54議席となり都議会第一党に。8月の衆院選で民主党が308議席獲得し、鳩山民主党内閣が誕生。

 今回の都議選が秋の衆院選にどのような影響を与えるか注目しなければなりません。