コラム・週刊Blessed Life 168
米中が認識する台湾の重要性

新海 一朗(コラムニスト)

 台湾はなぜ重要なのか。いくつかの理由があると思います。

 まず、地政学的な重要性です。
 中国が「第一列島線」(日本列島から台湾、フィリピン、南シナ海に至る線)、「第二列島線」(日本から小笠原諸島、グアムを結んだ線)を突破して太平洋に出るときに、台湾は最初の突破すべき所であり、台湾を攻略できなければ中国は太平洋に出ることはできません。

 太平洋に出ようとする中国にとっては、死活的に重要であると認識せざるを得ない所が台湾です。だからこそ、中国の太平洋侵出を阻止したい米国にとっては、台湾は安全保障上、絶対的に防御する必要性を痛感する「要所」なのです。

 次に、台湾を攻略することができれば、おのずと南シナ海全域の制海権を完全に手中に収めることができると中国は思っています。
 それだけでなく、尖閣諸島から沖縄に至る東シナ海までも抑えることが可能となると見ています。南シナ海と東シナ海を「中国の内海」とするために、台湾は絶対不可欠の「地政学的要地」です。そのような見解が中国の認識であると見て間違いありません。

 最後に、台湾が持つ技術力です。これはIT時代、AI時代にとって欠かせないもので、その鍵を握るのが「半導体」です。

 半導体生産では、1位が台湾、2位が韓国、3位が日本、4位が中国(2019年12月現在)となっていますが、台湾は押しも押されもせぬ先端技術の国家であり、台湾で生産される半導体は非常に優れた優良品として世界が買い求める商品になっています。
 中国も4位と頑張っていますが、台湾のものに比べると品質が劣ります。台湾と同じ品質のものはつくれません。

 欧米も日本も台湾の半導体を輸入し、さまざまなIT製品の製造を行っているのです。中国ももちろん、台湾の半導体を大量に輸入しています。台湾の半導体を世界が欲しがっています。科学の最先端に位置する半導体は必需の商品です。

 半導体産業において、半導体デバイス(半導体チップ)を生産するファウンドリーの世界最大手がTSMC(台湾積体電路製造)であり、このファウンドリーの半導体チップを手に入れようと、米国と中国がしのぎを削っているのが現在の姿であり、台湾を絶対に手放せないと、米国も中国も思っています。

 すでに2017年時点のファウンドリー市場において、台湾のチップ製造量は世界市場シェアの55.9%に達し、圧倒的な強さを示しています。
 優良な半導体チップが手に入らなければ、その半導体争奪戦に負けた国が負けるというのが世界の常識になっていますから、どれだけ台湾が重要であるかということが分かります。実に台湾の重要性というものが「半導体」にあったという事実を知らなかったでは済まされないのです。

 パソコンを動かすCPU(中央演算処理装置=コンピュータの頭脳)は半導体です。携帯電話/スマートフォン、デジタルカメラ、テレビ、洗濯機、冷蔵庫、LED電球、全てのデジタル製品、家電製品に半導体は使われています。

 厄介なのは、兵器などにも使用される軍用の半導体があるということです。半導体ビジネスはミリタリービジネスに連結されています。
 米中衝突の本質は、技術覇権を巡る熾烈(しれつ)な戦いであり、中国が近年米国を脅かすところまで来たということが、台湾争奪戦につながっています。