シリーズ・「宗教」を読み解く 158
3.11東日本大震災10年の祈り②
「亡くなった家族のその時の寒さを思えば、こんなの何でもない」

ナビゲーター:石丸 志信

 3月5日、宮城県平和大使協議会の協力で仙台駅から石巻へ移動し、昼前に石巻市南浜の「がんばろう!石巻」看板前に到着。追悼の鐘を突き、献花の後、仏教、イスラーム、ユダヤ教、キリスト教の代表的な祈りを唱え、結びにUPF(天宙平和連合)創設者の祈りをささげた。

 7年前のように、各宗教伝統を代表する宗教者平和大使がこの場に集い祈りたかったが、コロナ禍であることを考慮して代理して祈った。

 目を閉じて思いを込めて祈りの声を上げていくと、正面から太陽の光が強く照らし、全身が暖かく包まれるのを感じた。10年前とも7年前ともまた違う感覚。周囲も整備が進み、公園に造り替える工事も仕上げにかかっている。

 追悼の祈りを終えて、裏山の日和(ひより)山に上った。ここからは津波で流された石巻港と南浜一帯から太平洋が見渡せる。この高台にたどり着いた人たちは津波に飲まれるのを免れた。
 当時彼らが目にした光景を一瞬思い浮かべる。海岸線には防波堤が連なり、海と陸との境界線がはっきりと引かれているのが分かった。

 その後、石巻市郊外の高台にある霊園の望洋苑で祈った。7年前にこの観音像の下で追悼慰霊祭を開いた時は、強い風にあおられ凍えるような寒さを感じた。
 遺族代表の「亡くなった家族のその時の寒さを思えば、こんなの何でもない」との言葉が胸に刺さったのを思い出す。