コラム・週刊Blessed Life 159
東日本大震災、あれから10年

新海 一朗(コラムニスト)

 東日本大震災、あれから10年の歳月が流れました。

 2011年3月11日、14時46分、モーメントマグニチュード9.0の地震は、発生時点において観測史上最大の地震でした。
 そのために巨大津波が発生し、太平洋に面する東北、関東、北海道の海岸線をほぼなめ尽くしたその津波は、甚大な被害をもたらしました。地震災害と津波災害のダブルパンチです。

 特に福島原子力発電所を直撃した津波が、発電所の炉心溶融(メルトダウン)を引き起こし、放射性物質の放出が広域に及んで大きな問題となりました。

 この大震災での死者・行方不明者は1万8426人で、現在でも避難を余儀なくされている人の数が4万1241人に上り、避難が長期化しています。

 被災地の傷跡も徐々に整備され、復興の進んだ所では、新しい街づくりを達成しているような所もあります。しかし多くの被災地域では、まだまださまざまな問題を抱えたまま、復興再建の現場と政府機関および地域行政の調整など、資金面その他で滞ることも多く、その分、復興が遅れているといった現実が少なくありません。

 一つの例を挙げると、NHKスペシャル「徹底検証“除染マネー”」(3月10日)で報じられた内容などは、除染(放射性物質の除去)を巡るマネーの問題が深刻であることを物語っています。

 除染となると、除染作業も大変ですが、除染土壌を袋詰めしたその膨大な数の袋を仮置き場に置く所から始まり、それを中間貯蔵場所へ移し、最後には、最終処分する場所を確定するなど、場所の確保も大変です。最終処分場所があるかどうかも分かりません。

 各地の中間貯蔵場所に集められた除染土壌は、そこでずっと眠り続けてやがて最終場所へ変貌するのか、一体これらの除染土壌をどうするのか、見当もつきません。

 国家プロジェクトとなっている「除染」に政府がかけてきた金額はすでに5.6兆円に達し、この巨大な公共事業は今後、どこまでお金を食っていくのか想像もつかない状態です。
 こういう巨額の除染マネーに目を付ける建設業者や役人などの不正なども少なくなく、すでに有罪判決で逮捕されるなどの事件が発生しています。

 これは除染に限って話をしているわけですが、東日本大震災の被災からの復興という全体的な計画の進捗状況をつぶさに見ていけば、検討すべき課題は数えきれないほどであると言わざるを得ないのが現実です。

 壊れたものを作り直すということもそうですが、壊れたのは「物」だけでなく、人の「心」も壊れ、立ち直れないほどの深い「心の傷」を負った人々が、今も、あの時の衝撃的な悪夢から逃れられない現実を背負っているということです。

 津波で家族4人を失った宮城の女性は、気持ちは「あの時のまま」であると語ります。家族全員を失った少年はこれからどうやって生きていくのか。こういう話は、数えきれないほどあります。

 環境を再建する復興。人の心をよみがえらせる復興。本当の復興を完結させるのは容易ではありません。

 あれから10年ですが、10年はあっという間でした。
 昨日の出来事のような記憶が、すでに10年の歳月を経たのです。復興、復興と叫んでいた日本に、今度は新型コロナウイルスの感染ですが、東北の復興は依然として続きます。忘れてはなりません。