2021.03.08 17:00
コラム・週刊Blessed Life 158
日本経済は世界平和に貢献するのか
新海 一朗(コラムニスト)
日本経済は強いのか、弱いのか。
目まぐるしく移り変わる世界経済の姿に「盛者必衰の理」とか、「スタープレーヤーはいつでも変わるのが経済世界の常識」とか言うかもしれませんが、日本の経済は、非常に「守りのプレー」をする性質が強く、良くも悪くも、そのことが日本経済を支えている力でもあり、また、停滞させる要因でもあります。
日本の企業は、2017年度の統計で、中小企業(1~249人)280万社、大企業(250人以上)11,086社ですから、数から言えば、中小企業がひしめく構造です。
しかしこのような大企業と中小企業の比率は、日米を比較してみても、似たり寄ったりで、アメリカの場合、中小企業422万社、大企業26,144社です。
日本の場合、中小企業で働く人の割合は76.8%、大企業で働く人の割合は23.2%となります。
ここで考えてみたいのは、大企業の数が全企業数の中で0.4%しかないのに、働く人の数は23.2%を占めるということで、この人数の吸い込みが大企業といわれる理由です。
一つの例として、三菱グループ、三井グループ、住友グループ、この三つのいわゆる旧財閥の御三家が持つパワーを考えてみましょう。
創業の歴史を見ると、住友(1628年、住友政友)、三井(1673年、三井高利)、三菱(1871年、岩崎弥太郎)で、住友が創業393年、三井が348年、三菱が150年ですから、この三大財閥を兄弟になぞらえれば、長男「住友」、次男「三井」、三男「三菱」となります。
稼ぎ高から言えば、その反対に三菱がトップで、次が三井、そして住友となります。
トップの三菱を抜こうとして、近年、次男と長男の三井、住友が何かと合流することが多くなっていますが、この三強はとにかく日本の象徴であり、この三大グループだけで、日本のGDP(国内総生産)の2割を稼いでいる計算です。
歴史がある分、経営のノウハウ、組織の運営、知恵、人事管理、投資術、新規事業の取り組み、やってはいけないこととやるべきこと、難局の時代の超え方など、蓄積された知識と情報があるために、簡単に倒れるようなへまはやりません。攻めと守りを心得ています。
優れた管理者、経営者、技術者たちの偉大な集合体を形成しているために、分析、評価、対策なども、ほぼ抜かりがありません。銀行は大半潰れる時代が来るという声を聞けば、そうならないように対策を取ります。みすみす倒産させるような愚かなことはしません。
創業者たちは、いずれもその出自を探ると、武士です。
住友政友は越前(福井)で柴田勝家に仕えていた家系で、三井高利は近江(滋賀)で六角氏に仕えていた武士の流れ、岩崎弥太郎は甲斐の武田に仕えていた先祖が、その後、土佐(高知)に移った家系です。
日本の武士は厳しい倫理観によって主君に仕えていましたから、モラルが高いと見ることができます。
彼らが商人となったとき、そこには、おのずと「(主君の)ために生きる」という思想がありました。この精神が強固な伝統として、三菱の家訓(社訓)、三井の家訓(社訓)、住友の家訓(社訓)としてそれぞれ遺(のこ)されました。
国のために生きるという精神は三大グループ同じです。これをもう少し拡大すれば、世界のために生きるということになります。日本の企業は基本的に公益主義に立つ伝統があります。
神様はこれを期待されています。