夫婦愛を育む 154
カウンセラーの言葉

ナビゲーター:橘 幸世

 ある有名カウンセラーが自身の本で、カウンセリングが始まって間もなく、クライアントが「そんなこと言われたくて来たんじゃありません!」と泣きながら(怒りながら?)帰ってしまうことが時々ある、と書いていました。

 彼は慰めるのが自分の仕事ではない、と割り切っているようですが、実際に私の周りでも「カウンセラーの言葉に傷ついた」と聞くことがあります。

 せっかく相談するからには、心を開いて、与えられたアドバイスを受け止め消化する姿勢を持てたらいいですが、カウンセラーにもタイプがありますし、相談者との相性もあるでしょう。相談者にまだ受け止める準備ができていない時もあるでしょう。もうしばらく人生でもまれなければならないのかもしれません。

 カウンセラーの本を手に取るような私ですので、2月から購読を始めた全国紙(地元紙からの切り替え)に載っている人生相談の欄を、興味をもって読んでいます。

 毎日、さまざまな相談事が取り上げられ、著名な人たちが交替でアドバイスしています。新聞に投稿するほどですから、よほど深刻なのでしょう。

 読んでいると、人は悩みのただ中にいる時、その思考から身動きが取れないでいるように感じます。二つ以上の選択肢の狭間で、どちらも選べず、逆に言えばそれしか見えない状態です。
 そこに、アドバイザーが全く別の視点を示すことがあります。意外な答えに「そう来たか~」と、うなる私。相談者がその視点を「目からウロコ!」と素直に受け入れられれば、がんじがらめの状態から解き放たれるでしょう。

 プライドが高く、人をばかにする言動を繰り返す80代の父親に関する相談が載ったことがありました。

 相談者である娘さんもばかにされ続けてきました。
 「人の嫌がることは言わないで」と言っても、「本当のことだ」「おまえなんかに言われても何とも思わない」と返ってきます。

 父親は妻ともけんかが絶えません。死ぬ前には謝らせたいが、可能だろうか、という相談でした。

 回答は、「お父さんをもっと気持ちよくさせてはどうか」という提案でした。
 父親は妻と娘に甘えている内弁慶。「教えてくれてありがとう」「さすがよく分かってるね」「いてくれないと困る」など、褒めましょう。お父さんが不快な反応をしても引き下がらずユーモアで返しましょう。死ぬ前に謝られるより、「ありがとう」と言われる方が、きっとあなたもうれしいでしょう。

 ああ、一見どうしようもないような人に対しても、結局は感謝と称賛なのか、と再確認させられました。そしてふと思いました。人は「ありがとう」という気持ちになれば、「すまなかった」も自然に出てくるのではないかしら、と。


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