青少年事情と教育を考える 148
少子化と若者の未婚化、そして親の子育て観

ナビゲーター:中田 孝誠

 先週、厚生労働省が昨年1年間の出生数(速報値)を発表しました。その人数は872683人で過去最少を更新しました。前年から約2万6千人の減少です。

 また、婚姻件数は537583件で、やはり前年から7万8千件も減少しています。
 もちろん、これはコロナ禍が大きく影響しています。人口の将来推計を出している国立社会保障・人口問題研究所の予測では、2020年の出生数は90万2千人で、87万人台になるのは22年だと推定していました(2017年の推計です)。

 しかも、出産するのは妊娠して10カ月後ですから、今年はコロナの影響がさらに大きくなると考えられます。少子化、人口減少が予測以上の早さで進むことになりそうです。

 さて、本連載でも触れましたが、少子化の最大の要因は若者の未婚化・晩婚化だといわれています。政府の少子化対策でもそのことが指摘されています。

 若者が結婚できない要因として、経済的に不安定だからという点が繰り返し指摘されます。そのため現在行われている対策は、若い世代が安心して結婚や出産、子育てができるようにと、主に経済的支援を中心とした環境の整備です。

 ただ、若い世代の未婚化に「親の過干渉」を指摘する意見もあります。少子化と人口問題について研究するニッセイ基礎研究所の天野馨南子氏は、親の過干渉が若者の結婚する力を奪っているというのです。

 「過干渉はそれが長期化すればするほど、子ども自身の価値観構築を阻害し、自立して誰かと家庭をつくる力を奪い取る結果にもつながっていきます」と述べています。一例として、大学の就職相談にも親が関与することを天野氏は紹介しています(『データで読み解く「生涯独身」社会』宝島新書)。

 “子離れ”という言葉がありますが、子供の成長・自立を促す、先人から受け継がれた子育ての知恵だったとも言えます。
 少子化の加速は、親の子育て観の見直しを迫っていると言えそうです。