2021.02.18 12:00
もう一度皆さまにぜひ読んでいただきたい、編集部イチオシ!なコンテンツをご紹介。
「家庭力アップ講座」を毎週木曜日配信(予定)でお届けします。
家庭力アップ講座 8
第2章 心の姿勢③
家庭教育アドバイザー
多田 聡夫
(2)一時停止ボタン
私たちが目指しているものに家庭心情文化があります。家庭心情文化の核心である真の愛は、永遠に共に暮らしたいと願う心です。ですから家庭心情文化は、会えばまた会いたいと願います。朝、会社に送り出したのに昼になれば声が聞きたくなるのです。また、持っているものを何でも与えたくなります。そして、そうできないときには、切なくなるのです。
以前、娘と1月に一度、父と娘のデートをしていました。いろんな理由で毎回、マクドナルドでのデートでした。楽しく話をして、父と娘の間に問題がないときに、私は娘に伝えたい大切なことを話しました。神様との出会いなどです。マックにいるときにふと娘を見ながら、「この子が、家庭を持ったら、家族のためにどんな料理を作ってあげるのだろう。ひょっとしたら、マック味かもしれない。そう思うと、この子にフランス料理や中華料理などを食べさせてあげたい。そして、その料理の味を教えてあげたい」と考えました。でも諸般の事情で、そうできない切なさを感じたのです。
また、私たちの目指す家庭心情文化は、分かち合いたいと願うものです。喜びや悲しみやさまざまなことを、私たちはなぜ分かち合いたいと願うのでしょうか。そのようにして家族としての一体感を感じたいと願っているからです。
私たちは、なんと感情的になりやすいことでしょうか。私たちも何度か経験したことがあるでしょう。その時の勢いに流されて心にもないことを言って、後悔することがあります。そして、「あんなこと言うんじゃなかった。あの時ちょっと止まって考えていれば、あんなことにならなかったのに」と思うのです。些細なことで、言い返したり、反発したりして、とんでもない方向へと進んでいってしまうことがあります。
子供の気持ちに共感したいと思っていたとしても、いっぺんに冷静な心が吹き飛んでしまい、それが続くと、家庭心情文化を創ることに対しても、自分自身に対しても自信がなくなってしまいます。
そんなときに、「ちょっと待てよ」と、一時停止ボタンを押すことで、自分の反応を選択できるようになるのです。子供の様子を見てみようと待ってみたり、子供の気持ちを聞いてみたり、言葉をかけて注意してみたりと、私たちの反応を選択していくことができるようになるのです。
ここで大切なのは、子供の態度に感情的になって、この感情のままに行動しては良くないという「自覚」ができていることです。
「自覚」の本質は、自分自身のことを知り、自分の存在を他人や周りの環境から離れたものとして認識し、客観的に自分自身の傾向や、考え方、思いや望みを把握することです。そしてこのように「自覚」する姿勢がなければ、子供の心を真に理解したり、信頼し愛することなどできず、親自体が変わることもなかなか難しいと思います。以上のことを自覚できるようになれば、自分自身が「一時停止ボタン」を押せるようにだんだんとなっていくのです。
一時停止ボタンの効果は、家族関係の中で感情的になってしまったときに、「一時停止ボタン」を押すことにより、感情的行為が抑えられることになります。今までのように、夫婦喧嘩をして子供たちにいやな思いをさせてしまうところを一時停止ボタンを押すことで夫婦の感情的行為を抑えることができたわけですから、自分の家族のよくない習慣的な流れを変える人になれるのです。また、夫婦喧嘩をして、子供に伝えられようとした、悪習・よくない傾向を断ち切ることができるようになります。
「一時停止ボタン」を理解するために、「10まで数える」というゲームを紹介しましょう。他のことは考えず、10数えることだけに集中してみてください。
その方法は、大きく息を吸い込んだのちに吐き、そして心の中で「一つ」と数えます。再び息を大きく吸い込んだ後に吐きます。そして、心で「二つ」と数えます。このようにして「10」まで数えるのです。一度挑戦してみてください。
もしここで呼吸について考えたりすれば、それも”考え”に属します。7まで数えて「後3回やればいいのだな」などと考えるのも、やはり考えに属します。「そうか、10まで数えればよいのだな」と言いますが、心はなかなかついてきてくれません。大抵、3つか4つまで数えれば、別の考えにはまり込んでしまうでしょう。
これで他のことを何も考えず「10まで数える」ことができれば、一時停止のボタンが押せたことになります。まず自分の情況から、一歩身を引いて自分自身を見つめることができたことになり、客観的に、自分自身の行動を意識することができたのです。
一時停止ボタンを押せることによって、私たちはだんだんと家庭心情文化を形成していくことができるようになるでしょう。