み言:ヤコブは、「私がエサウ兄さんより何倍も粘り強く、父や母、神様に兄弟たちよりもよく仕えれば長子になる」と考えました。父母に仕えたり、神様に仕えるにおいて、兄弟を愛し、一族を接待するにおいて、エサウよりヤコブが優れているというときは、すべての人が兄エサウをほうり出してでも、ヤコブを兄にするという理論が成立するのです。ヤコブはそれを望みました。ヤコブは本当に賢い人です。それは何かというと、ヤコブは出発と最後を見て闘う人です。ヤコブは最後を見て、遠い所を見つめて闘う人であり、エサウはその場の現実を見て闘う人だということです。(『世界経典Ⅱ』より)
エサウとヤコブは双子ですが全く性格の違う兄弟でした。エサウは鹿を追いかけながら野原や山を駆け巡る狩人になりました。勇猛な性格です。狩りの技を磨き、獲物をしとめるために知恵を使いました。目に見えるものや体に感じるものに敏感でした。ヤコブは反対に穏やかな性格です。天幕に住んで、長老たちの話に熱心に耳を傾け、先人の知恵を学び取る人でした。おじいさんのアブラハムが神様に呼ばれてから故郷を出てきたことや、お父さんのイサクがモリヤの山で供え物になろうとした物語も聞いたでしょう。お母さんのリベカも、エサウとヤコブがおなかの中にいる時に聞いた神様の言葉を話してあげたかもしれません。
そのように育てられたヤコブは、お兄さんとは違って、目に見える物よりも、目に見えないものを大切にし、今の満足よりも将来のことを考える人になりました。神様に導かれた祖父母、父母の姿を見ながら、目に見えない神様のことを一番に考えるようになりました。
お母さんと心を合わせて、神様がアブラハムとイサクに約束したことは必ず成ると信じて行動しました。だからヤコブは食事を譲る代わりにエサウから長子の特権を譲ってもらう約束をしました。神様の前で約束したので、実行しなければなりません。しかし、エサウがそうしなかったので、ヤコブはエサウのような格好をしてイサクから祝福してもらったのです。
横取りされたと思ったエサウはヤコブを憎みました。ヤコブは兄エサウの憎しみが消えるまで、家を離れて、ラバン伯父さんのところで苦労しなければなりませんでした。そんなヤコブを見守る神様は、旅立つ彼に一度だけ声を掛けました。「あなたと共にいて、どこにいてもあなたを守る」と言われました。
神様は、いつもヤコブに現れて、励ましたり慰めたりしたわけではありません。ヤコブが信頼できる僕として勝利するまでは、ただ黙って見守るしかありません。それでもヤコブにとっては十分でした。一度の出会いを心に刻んで、新しい一歩を踏み出すことができたのです。
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