子どもの本音は「もっとやりたい」
教室で鉄棒をした時のことです。「飛び上がり」で鉄棒に上がったBくんは、「前回り」の途中に片方の手が離れ、ズルズルと鉄棒から落ちてしまいました。その場で「ぎゃーっ」と泣き叫び、ピアノのほうに引っ込んでしまいました。そこでも、しくしくと泣いていたのです。
担任の先生が「大丈夫だから」と慰めると、また火がついたように泣きます。それで、「分かりました。しばらくそこにいてください」と伝えると、少しずつ移動して教室を一周し、心が落ち着いたのか、泣きやんで鉄棒の所に戻ってきたのです。
「鉄棒やるの?」と聞くと、「やる」と答えたので、「足かけ」と「尻上がり」をさせました。「上手にできたね」と褒めると、「もっとやりたい」と言うのです。鉄棒の片付けをする体育の先生の後ろをついてきて、しきりに「先生、もっとやりたい」と訴えるので、鉄棒を片付けた部屋で、もう一回させてあげました。すると、顔がぱーっと明るく晴れたそうです。
ところで、Bくんのお母さんはとても素敵な方で、家で起きたことがらを毎日のように連絡帳に書いてくれます。毎回、Bくんとのやり取りが面白くて、「落ち」もあります。
ある日、清平での出来事が書いてありました。Bくんは疲れて大変な中、役事は一生懸命行ったといいます。そして帰国後、「お母さん、役事やっていい?」と聞くそうです。本当にかわいいですね。
子どもが正直に言ってくる願いに対して、「全てをかなえてあげるわけにはいかない」というのが、大人の本音でしょう。しかし、親の「こうしなければならない」「こうあるべき」という枠に、子どもを当てはめようとしないことが大切です。一回、二回、三回と共有してもらううちに、子どもの心は解放され、目標に向かう「やる気スイッチ」が入るようになるのです。