青少年事情と教育を考える 141
高校の新科目「公共」とは

ナビゲーター:中田 孝誠

 前回、「主権者教育」について取り上げました。
 高校では、2022年度から必修科目として新設される「公共」が主権者教育に大きな役割を担います。

 「公共」では、より良い社会の形成に主体的に参画するのに必要な力を育むことが重要な目標になります。

 学習指導要領には「持続可能な地域、国家・社会及び国際社会づくりに向けた役割を担う、公共の精神をもった自立した主体となることに向けて、幸福、正義、公正などに着目して」と書かれています。

 自立した主体というのは、あくまで公共の精神を持つ人間に成長するという意味であって、単なる個人主義ではありません。国や地域社会、あるいは世界の問題に対して、「自分はどう考えるか」「他の人はどう考えるか」が常に問われるわけです。

 また、自立した個人を支える家族・家庭やコミュニティー、世代間の協力、さらには自助・共助・公助の重要性もうたわれています。

 科目の具体的内容としては、法や規範、地方自治や国家主権、領土、安全保障、国際貢献、職業選択、財政、社会保障など、幅広い問題が扱われます。
 社会に溢れるさまざまな情報を正しく読み取る力を育てることも含まれます。そのため、討論や模擬選挙、模擬裁判なども行われます。

 もう一つ注目すべき点は、「公共」や同じ公民科の科目である「倫理」、特別活動が、道徳の中核的な指導の場面になると位置付けられているということです。

 高校では、小中学校のように道徳教育は教科として行われているわけではありません。その代わり、「公共」や「倫理」の時間を人間としての在り方・生き方を指導する中核にするということが学習指導要領に明記されています。

 自立した人間になるということは、当然ですが知識だけでなく、人格的にも成長していかなければなりません。

 「公共」がこれからどのような形で展開していくか。注目していく必要があると思います。