2020.11.10 12:00
世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~
米大統領選バイデン氏が「勝利宣言」。しかし…
渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)
今回は11月2日から8日までを振り返ります。
この間、以下のような出来事がありました。
米大統領選挙始まる(3日)。米国務省、台湾に無人機売却承認を発表(3日)。米、パリ協定から正式に離脱(4日)。欧州コロナ感染死者30万人超、感染者1200万人に(6日)。米大統領選バイデン氏勝利宣言(7日)、などです。
米大統領選の投開票が11月3日に行われました。
しかし激戦州での票集計作業が長引き、ようやく7日、バイデン氏の当選が「確実」となりました。CNN、NBC、CBS各局が同日午前11時半(日本時間8日午前1時半)、バイデン氏がペンシルベニア州(選挙人20人)を制して当選を確実にしたと一斉に報道したのです。
同日午後、バイデン氏は地元デラウェア州ウィルミントンで演説し、「米国を修復する時が来た」「分裂ではなく統合を目指す大統領になることを誓う」と述べました。そして「米国の魂をよみがえらせ、この国の主力である中産階級を立て直し、米国を再び世界から尊敬される国にするためにこの職を目指した」と強調したのです。
一方トランプ氏は、「バイデン氏はいかなる州でも勝者として認められていない」「正当な勝者が決まるよう、月曜日から法廷で訴えていく」として、法廷闘争を続ける考えを示しました。トランプ氏の闘いは続きます。
実際、7000万票以上を獲得したトランプ氏の戦いは「素晴らしい」ものでした。
新型コロナウイルスの急襲下にありながら、壊滅的打撃を受けた経済の立て直しに力を注ぎ、驚異的な回復基調に乗せたのです。しかし世界最多の感染者数、死者20万人以上という数字は重く、政権担当者として批判を甘んじて受けなければならない状況に置かれたのです。
選挙戦の全期間を通じて、民主党支持の大手メディアと世論調査機関がバイデン候補の優位、圧勝を強調し続けました。その影響を考えた時、国民の正確な判断を狂わせる要因となっていると言わねばならず、これこそ米国民主主義の危機です。
民主党支持の大手メディアはおしなべて、今の米国社会はトランプ氏の偏狭な統治のために人種差別や貧富の格差が深刻になったと断定的に報道しています。
しかし今回の選挙の出口調査によるとトランプ氏は、黒人では前回の8%から12%へ、ヒスパニック系では28%から32%、アジア系では27%から31%にそれぞれ得票数を増やしているのです。(「産経」11月8日付)
同時に行われた上・下院議員選挙で共和党は、上院では多数派保持の勢いであり、下院は多数派の民主党から数議席を奪っています。
新大統領就任までのスケジュールは今後、12月8日までに各州は選挙結果を確定させ、12月14日には各州の選挙人が大統領候補者に投票。2021年1月6日に連邦議会が結果を集計して、1月20日、新大統領の就任式となります。
トランプ陣営が提起した郵便投票の有効性を巡る法廷闘争の結果次第では、上記のスケジュールどおりに進まない可能性もゼロではありません。
トランプ氏の闘いを「悪あがき」と批判するのは間違っています。憲法下にあっての正当な手続きなのです。それがアメリカの魂であり、希望でもあるのです。
推移を見守りましょう。