夫婦愛を育む 138
独り善がりにならないよう…

ナビゲーター:橘 幸世

 地元紙に、女性ライターが交替で執筆しているコーナーがあります。

 多くは日常の一コマを切り取ったもので、皆さんペンネームでの投稿のためか、夫婦のこと、親とのこと、子供とのこと、コロナ禍での変化等、飾り気なくありのままを率直につづられています。
 そこに妻の主張・夫への不満が散見されるのが気になります。

 女性は「かくあるべき」と独善的になってしまう傾向がありがちなのでよくよく気を付けなければなりませんが、コラムには、その方面での失敗談もあれば(失敗したことに気付かれた、良いエピソードでした)、夫への不満や要求で結んだ話もありました。

 コロナ禍の中、直接女性たちの話を聞く機会は今年に入ってからはあまりありませんが、やっぱり「私は正しい」「夫に変わってほしい」という思いの中にある女性は多いのだな、と再認識させられます。

 かく言う、久しく皆さんにお話ししてきている私自身も、油断すると、ちょっとしたNG行動をしてしまいます(多くは、子供のように振る舞ってクリアしますが)。

 自分の判断や価値観を相手に押し付けないようにするのは、本当に簡単ではありません。新聞のコラムを読みながら、幸福の土台となる原則を改めて自分に確認しています。

 そんなふうに振り返っていると、かつて『新・良妻賢母のすすめ』(コスモトゥーワン社刊)で読んだ、あるアメリカ女性の話を思い出しました。

 彼女は熱心な健康食品派でしたが、夫は全くの無頓着で、ジャンクフードであろうと好きな物を食べたいというタイプでした。だからといって、賢い彼女は健康志向を押し付けようとしません。
 以下、引用です。

 結婚してすぐ、彼女は夫に優しくこう言いました。「ねえあなた、あなたのこれまでの食生活が私とは違うのは知ってるわ。もし私が自分の好きな食事を私用に作って、あなたにはあなたの好きな食事を作ったら、嫌かしら?」
 夫は同意し、彼女は数カ月間、二種類の食事を作り続けました。まもなく夫は妻のよい食生活を受け入れ、自分の家族に説いて聞かせるようになりました。

 初めてこれを読んだ時、強いイメージのアメリカ女性にもこんな立派な人がいるんだ、と感嘆したものでした。もしかしたらずっと続くかもしれない二種類の食事作りに、手間を惜しまず軽やかな心で取り組んだ彼女。

 相手を尊重しつつ、自分の価値観も守る、そして行動で見せる。
 短いエピソードの中に、多くの事に通じる、とても大切なメッセージが入っていると思います。


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