子育て道しるべ 2
乳児期

(APTF『真の家庭』148号[2月]より)

須永孝子

母親は「最初の先生」

 子供にとって親の存在はとても大きいものです。

 新生児は母親の懐の中で安らぎ、多くのことは五感を通して吸収しながら学んでいきます。胸に抱かれて聞こえてくる鼓動や母親の声がお腹の中で聞いていた時と同じであることで安心して眠ります。はじめて飲む母乳の味は新生児にとって命の源で、その味覚は最高のものです。乳幼児期は、既に味覚と聴覚、皮膚感覚は敏感なのです。

 母親は子供にとって「最初の先生」で、お母さんが赤ちゃんにやさしく語りかけたり、歌ったり、スキンシップをしたりすることで赤ちゃんは一つ一つ学んでいきます。

 ただ寝ているだけに見える赤ちゃんですが、体の成長だけでなく五感を通して感性も発達してきます。お母さんの心情や家の中の雰囲気を感じて喜んだり、不快感を抱いてぐずったりします。乳幼児期はまず食事、睡眠、着脱、排泄等の基本的な生活習慣をつけることが大切で、それは母親が子供の成長に合わせて繰り返しながら対応して身につけさせていくものです。

3歳までの心情的、知的教育が重要

 “三つ子の魂百まで”と言うように、脳科学の立場からも3歳までの心情的、知的教育がとても重要です。本の読み聞かせは幼児期に欠かせないものです。忙しい中でも子供との大切な心情教育の時間として多くの本を読んであげたいものです。私は10年間、保育園で2歳から3歳児に対してリトミック(音楽教育)をしていました。

心や頭の中で活発に動く

 子供たちは喜んでピアノの曲に合わせてお花や蝶になって踊ったり表現したり、車や電車、飛行機になって楽しく遊びます。その時に、全く動かないで椅子にすわってみんなの動きを見ているだけの子供がいます。先生が手を繋いでもいやがってやりません。また簡単な手遊びや楽器もやらない子がいます。私はそのような子に対しては決して強制しませんが、親たちはそのような子供の姿を見ると、「自分の子は遅れているのではないか」と心配したり、無理やりやらせようとします。ところがそんな子がある日ピアノに合わせて突然動き出して、今までやっていた子よりも上手に表現して楽しむようになって先生たちがびっくりすることがあります。

 その子は皆がやっている時はただ座って何もしていないように見えますが、気持ちや頭の中では皆と一緒に動いて、色々吸収していたのです。それから自信を持って動くようになったわけです。大人の目線だけで、子供たちの動きや表に出た所だけを判断してしまいがちですが、子供たちの心や頭の中は活発に活動していて成長しているのだと理解することも大切です。