夫婦愛を育む 132
内なる批判者

ナビゲーター:橘 幸世

 地元紙に掲載中の連載小説を興味深く読んでいます。
 社会と一線を画して理想を追求する団体(架空)を扱っていることもさることながら、主人公の小学校時代の思いが丁寧に描かれているからです。

 あまり社交的ではない彼女は、クラスの中では目立たず、中心的女子グループからはぞんざいに扱われます。そんな扱いを受ける自分は「つまらない子」と思われていると解釈します。成績が良いことは自己肯定感にはあまりつながっていないようです。

 持ち前の明るさや外見で人気者になる子がいる一方、そういう子を中心とした輪から遠いところにいる子もいます。そんな中で、自己評価が形成されていくのだなと、読んでいて改めて見せられている感じです。

 私自身の子供時代を振り返っても思い当たる点がありますし、自分の娘もそんな中で子供なりに苦労したのかな、などと今更ですが想像します。
 子供の自己肯定感を育むことの大切さがいわれて久しいですが、家庭のみならず、次に遭遇する子供社会での立ち位置によっても大きく影響を受けます。

 子供時代に形成された自分に対する負の思い込みが、幸せに生きる邪魔をしてきたことは、拙著『夫婦愛を育む魔法の法則』でも触れましたが、そんなブレーキを内に抱えている人は珍しくないかもしれません。

 親・兄弟姉妹・先生や友人から、行動や成績・容姿などについて投げ掛けられたさまざまな言葉が(善意から発せられたものも含めて)、自分の中に否定的内容として残っていることがあります。
 また、誰も何も言わなくても兄弟姉妹との比較から劣等感を抱いている人もいるでしょう。それが事あるごとに頭をもたげて自分を批判するのです。

 自分は駄目な人間だ。
 自分が幸せになれるはずがない(良い事が起こると、次に悪い事が待ち受けているようで怖い)。
 自分を愛してくれる人がいるとは思えない。
 自分にそんな大きな事ができるとは思わない、などなど。

 こんな思いは、心理学で「内なる批判者」と呼ばれていて、幸せをブロックします。取り去るには、誰がいつそれを言ったのか、ルーツをたどってみましょう。

 仮に、母親の一言が引っかかっていたら、思い切って聞いてみるのもいいでしょう。その言葉の背後にあった親の思いを知って、解き放たれることもあります。勘違いから「自分は親に愛されていない」と思い込んでしまっている場合もあります。
 いずれにしろ、相手は過去の一時の感情で発したものです。囚(とら)われるのはやめましょう。

 自分に発せられた肯定的言葉(褒め言葉)をきちんと受け止めて、それらを大切に育むことがポイントです。過去の批判は一つ一つ頭の中から消して、これまで受けてきた称賛を上書きしましょう。


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