愛の知恵袋 3
「ハッとするような美人」

(APTF『真の家庭』より)

松本 雄司(家庭問題トータルカウンセラー)

まれに見る美しい女性
 先日、私はまれに見る美しい女性に出会いました。「いまどき、この日本にまだこのような美しい女性が残っていたのか」と驚いたほどです。カウンセリングの仕事でお会いしたのですが、その人と話し始めて5分もしないうちに、私の心は深い驚きと感動に包まれていました。

 「勤務は大変そうですか?」

 「はい、仕事はかなりハードなようで、先日も出張から帰られたときは、とても疲れていらっしゃったようなんです」

 私は、彼女が勘違いして、義父か上司の事を話しているのかと思ったのですが、彼女の話はまぎれもなく夫のことでした。

 「あなたはご主人と話すときにも、いつも敬語で話されるんですか?」と聞いてみましたら、「はい」という答えでした。

 「敬語の使い方がおかしいんじゃないか」とか、「やりすぎではないか」といった見方もありますが、そういうことを跳び越えて、私は思わず心の中で”うーん”とうなってしまいました。彼女の話し方には少しも不自然さがなく、身についている様子だったのです。

 夫は出張先で彼女に出会い、その後、遠距離での交際になって、彼女の両親は娘を遠くに嫁がせることにためらいがあったようですが、彼と彼の両親のたっての願いで結婚したといいます。当然のことながら、夫は彼女をとても大切にしてくれるそうです。さもありなん! 私が親でも息子にはこういう女性を妻にしてあげたいと思うでしょう。

美しさの秘密は“ことば”
 “美しい言葉から美人は生まれる”とは、亀井勝一郎の言葉です。

 実を言うと、彼女は顔は決して美人とは言えない方なのです。しかし、とても清々しくきれいに見えたのです。私はあらためて、「言葉遣い一つで、こんなにまで人は違って見えるんだ…」ということをしみじみと感じたのです。“女の器量は言葉しだい”とはよく言ったものだなと思いました。

 今、日本では結婚しても夫婦仲がうまく行かず衝突し、離婚にまで至る家庭が4割近くにまで及ぼうとしています。その衝突を起こす原因の最たるものが、実は、“言葉遣い”なのです。最近の日本では、尊敬語や丁寧語は外でのお付き合いや営業用の言葉になってしまい、家庭内からは姿を消してしまいました。代わりに、家庭内を行き交っているのは、乾燥した無感情な言葉や、ぶっきらぼうで乱暴な言葉ばかりです。その結果、お互いに傷付けあって家族一人一人が不機嫌になっています。

 昔から、“言葉はその人間の品位を表す”といわれます。男性も女性も品格を失わない丁寧な言葉遣いを身に付けたいものです。時々、「あの人は口は悪いが、根はいい人だ」ということも言われますが、それとて、「見かけよりは」という程度であって、本物とは言えません。

幸せをもたらす“ことば美人”
 夫婦がお互いに切に求めているのは「優しさ」です。子供も同じです。家族間の問題の完全な解決には時間がかかるかもしれませんが、まず、今日からすぐにでも始められる解決策の第一歩は、「言葉遣いを変えること」です。

 そこで提案です。これから、夫婦、親子の間において、今までより一段階だけでも待遇をアップして、「丁寧な言葉遣い」をしてあげようではありませんか。「尊敬語」は大げさだとしても、せめて「丁寧語」を使ってみようではありませんか。

 実際に、このアドバイスを実践したあるご家庭では、「1ヶ月もしないうちに、驚くほどの変化が現れ、家庭に平安が訪れた」ということでした。

 まず私達が夫婦間で丁寧な言葉遣いをすることによって、子供達にお手本を示してあげましょう。その意味では、特にお母さんの役割は重要です。ぜひ、“ハッとするようなことば美人”になりましょう。

 実は、子供たちはみんな“きれいなお母さん”が大好きです。そして、丁寧な優しい言葉で接してくれる“ことば美人”のお母さんは、もっともっと大好きなのです。もちろん、お父さんもそんなお母さんが大好きであることは言うまでもありません。