2020.08.25 12:00
世界はどこに向かうのか
~情報分析者の視点~
米大統領選が本格化~不安な「バイデン&ハリス」コンビ
渡邊 芳雄(国際平和研究所所長)
今回は8月17日から23日までを振り返ります。
この間、以下のような出来事がありました。
安倍首相、検診のため都内の病院へ(17日)。北朝鮮、党中央委員会招集(19日)。米・民主党、バイデン氏を大統領候補に正式指名(19日)。安倍首相の連続在職日数、最長の佐藤栄作氏に並ぶ2798日(23日)、などです。
今回は米大統領選を扱います。
米民主党は8月17日から20日、中西部ウィスコンシン州ミルウォーキーを拠点に党大会を開催し正副大統領候補を正式指名。91ページからなる政策綱領も採択しました。コロナ禍にあって異例のオンライン形式による「バーチャル党大会」となりました。
大統領候補はジョー・バイデン氏77歳、副大統領候補は米国政治史上初の黒人女性のカマラ・ハリス氏55歳です。もしバイデン氏が当選すれば史上最高齢大統領となります。ここからバイデン氏は1期4年、4年後の大統領候補はハリス氏になると見られているのです。
現時点でバイデン氏は世論調査の数字を見る限り、トランプ氏に対して優勢に戦いを進めています。各種世論調査で5~10%の開きがあるのです。
しかしこれまでの選挙を振り返れば、この数字は「信用」できません。よく引き合いに出されるのが32年前の1988年の選挙戦です。その年の7月、民主党のマイケル・デュカキス・マサチューセッツ州知事(当時)がその年の民主党候補に指名されました。共和党の候補者は父ブッシュ副大統領(当時)です。
この時のギャラップ社の調査ではデュカキス氏の支持率は55%、ブッシュ氏は38%で17ポイントの差があったのです。
多くがデュカキス勝利を予想しましたが、実際はブッシュ氏の圧勝でした。勝負は本選に入ってから決まるのです。今は「つばぜり合い」というところです。
8月19日に採択された政策綱領やバイデン氏の指名受諾演説で一番不安な点は、やはり対中国政策です。バイデン氏は演説で、中国を名指しで言及することを避けました。さらに綱領などから読み解く限り、経済や安全保障など広範な分野で中国に付け入る隙を与えたオバマ前政権の路線に回帰するのではとの不安を禁じ得ません。
綱領では、国際規範を弱体化させる中国の動きに対しては「友好国や同盟国を結集して対抗する」と宣言する一方で、「中国からの挑戦は基本的に軍事的なものではないと信じる」としています。
さらに「民主党は自滅的で一方的な関税戦争に訴えたり、『新冷戦』のわなに陥ったりしない」と強調しており、これは習近平政権による「米国が『新冷戦』を仕掛ける」と断じている中国の対米批判に極めて似ているのです。
11月3日の投開票まで、「トランプ&ペンス」対「バイデン&ハリス」の本格論戦が始まります。
はっきりしているのは体制・文化マルクス主義との闘いは「トランプ&ペンス」でなければ不可能だということです。