2020.08.21 22:00
愛の知恵袋 131
「えらいな」「かわいいな」で夫婦は長続き
松本 雄司(家庭問題トータルカウンセラー)
イケメン男性に出会ってまっしぐら…
60代の男性からの話。実家を離れて暮らしている彼の娘さんは35歳。数年前から結婚紹介業者に会員登録して熱心に婚活をしている。「希望する年収の男が見つからない」と不満を漏らしていたらしいが、最近、「遂に、見つけた!」という知らせが来た。「年収はさほど良くないけど、専門学校の講師だというし、何よりもイケメンなの! こんな理想的な相手はもう二度と出てこないわ。絶対結婚する!」と言っているという。
よく聞いてみると、その男性は二度の離婚歴があるらしい。父親はその点が気になって、「慎重に考えたほうがいいよ」と忠告したのだが、彼女は全く聞く耳を持たない。どうしたらいいものか…という相談だった。
「私も慎重に検討したほうが良いと思いますが、本人の意思が固いのなら、止めることもできないでしょう。ただ一つだけ、『もし、失敗したと思った時は早くけじめをつけたほうが良い』という事だけは伝えておいたらいいですね」と話しておきました。
1か月後、またその父親から電話があり、「あの後、娘は独断で家財道具をもって彼の住むマンションに行って同居を始めたんですよ。やれやれと思っていたんですが、2週間も経たないうちに突然逃げ出してきて、今は、がっくり落ちこんでいます…」ということだった。
彼女によれば、3日も経たないうちから、「今は籍は入れないよ。籍は子供ができたら考えよう」「僕は干渉されるのが嫌いなんだ。今まで同様に自分のしたいようにさせてもらうからね」「君も働いているから、家の生活費は君が出してね。僕の給料は自分の使いたいことに使うから」…と次々に言ってきたという。
さすがの彼女も、「こんな男とはやっていけない」と、あきれ果てて飛び出して来たらしい。
学歴・肩書より「人柄」、容貌より「心根」
これと同じような苦い経験は、「キレイ」な女性と結婚した多くの男たちが味わっている。もちろん、イケメンでも誠実な男性はいるし、美人でも気立ての良い女性はいるだろうから、一概には言えないが、要は、結婚相手を探すときには、「学歴・肩書」よりも「人柄」を、「容貌」よりも「心根」を重視して判断したほうが良いということである。
これは昔からずっと言われてきたことだが、自分だけで判断するのは意外と難しい。
日本では、昔から親が子供の伴侶を探してきた。大正時代からは見合い結婚が主流になった。そして、戦後は恋愛結婚全盛時代になった。しかし、それと同時に結婚の破綻率が急上昇した。恋愛結婚の離婚率は、見合い結婚の約4倍である。
恋愛結婚の離婚率が高い原因の一つは、恋愛では本人の衝動や性的欲求が中心になり、顔やプロポーションなどの外的魅力に魅了されてしまうことが多いからだろう。「恋は盲目なり」という言葉があるように、本能的な熱情に動かされることが多く、自分と相手の性格や長所・短所などを客観的に見つめることのないまま結婚しているからである。
もう一つの原因は、相手の家族や友人のことを知らないまま結婚する人が多いためであろう。結婚後、夫婦が諸問題を乗り越え、生計を維持し、子供たちを良い環境で養育していくためには、お互いの家族や親戚や友人達の温かい協力が必要である。相手の生い立ちや家族的背景を理解しないまま結婚をしてしまうと、後で大変な試練に遭うことがある。
「えらい」「かわいい」こそ、夫婦愛持続の秘訣
「結婚生活の継続力」という点からみたとき、「夫婦は互いに〝何らかの魅力〟というものを持ち続けないと、愛を長続きさせることはできない」ということである。
では、どんな魅力が必要なのだろうか。「イケメン」や「美人」という要素が男女の一体化に大きな力を発揮できるのは、交際中と結婚したての時期くらいである。家庭生活に入ってからは、「経済力」や「言葉づかい」や「癖」や「生活習慣」が問題となり、更に年月が経てば、互いの「性格」や「価値観」や「人生観」の違いなどが課題になってくる。
そこで、結婚生活全体を通じて夫婦円満に有効な「魅力」とは何だろうか。それは平たく言えば、「エライ」ということと「カワイイ」ということ、この二つの要素に尽きると思う。
気に入らないことは多々あっても、「この点では、エライなあ…」と心から思えるものを見出せるかぎりは、相手を尊敬できるし、助けてあげたいと思えるのである。但し、「エライ」といっても、知識や仕事能力のことだけではない。どんな点でもよいのだが、「よく頑張っているなあ…」「人間として立派だなあ…」と思える一点があればよいのだ。
また同様に、相手の中に一つでも、「この点では、カワイイなあ…」と心から思えるところがあれば、相手をいとおしく感じ、愛し続けることができる。但し、「カワイイ」と言っても、顔やおしゃれのことだけではない。言葉づかい、ちょっとしたしぐさ、笑顔、明るさ、あどけなさ、純真さ、けなげさ、一途さ、不器用さ…いろいろである。
さて、我に返ってみよう。自分には「エライな!」と思われているところ、「カワイイな!」と思われているところがいくつあるんだろうか? 一度、目の前の伴侶に聞いてみよう!